ボーカルの浮かび上がるような音離れのよさが気持ちいい
コンパクトで緻密な音場再現
試聴は我が家の試聴室で行なった。試聴距離は設計時に想定したという75cm前後として、ノートPCの両側にスピーカーを置くような現実的な使い方に近い配置としている。まずは手持ちのiPod touchでBluetooth再生を行なったが、スピーカーが近いにも関わらず、スピーカーから音が出ている感じのない音離れの良さが印象的だ。
ポップスを聴くとボーカルがフワっとスピーカーの間に浮かび上がり、音像の厚みや実体感のある再現になる。その少し奥にギターやべース、ドラムなどが配置され、立体的なステレオイメージが得られる。
音場の広がりの豊かさと、個々の音像の定位のよさがきちんとバランスしている。ニアフィールドで聴いていることもあり、スケール感こそややコンパクトになるが、その分緻密にステージが再現される。
音色も、中高域の充実感と高域のしなやかな鳴りが特徴で、自然で爽快感のあるサウンドだ。低域はずっしりと来るような重みはやや軽めになるが、ドラムのアタックの力強さなが不足することもなく、物足りなさは少ない。
ちなみに、PCとUSB接続してハイレゾを含む音源も聴いてみたが、情報量はさらに増し、クラシックならばホールの美しい響き、ボーカルの豊かなニュアンスがさらに出てくる。こちらの実力の高さもかなり立派なものだ。
特にボーカルは絶品で、まさに手の届く距離に自分の好きなアーティストが現われたような感覚になる。ワイヤレスのBluetoothの再生もなかなかのものだが、本機のユーザーとなったならやはりハイレゾも試してみてほしい。
大音量が出せない環境でも安心!
小音量モード「LVM」で聴きやすい
特筆したいのは、小音量再生のための「LVM(Low Volume Mode)」。これは小音量時に不足しがちな低音や高音の不足を補うもの。スピーカーの出力音圧レベルに合わせ、音量によって変わる人間の耳の聴感特性に合わせた最適な周波数特性の補正が行なわれる。
これも、ソニーの高級AVアンプが搭載していた「サウンドオプティマイザー」をベースにした技術だ。ただし、スピーカーの出力音圧レベルを測定する機能は持たないため、他のスピーカーとの組み合わせでは十分な効果が得られない。
CAS-1は本体部とスピーカー部、それぞれ単体での発売の要望もあったが、Low Volume Modeが十分に活用できないためにセットでの販売のみとなっている。それだけ、小音量時の再生を意識した製品ということだ。
単に音量を絞ってみると、その分だけ特に低音の伸びが失われ、ドラムのパワー感だけでなくボーカルも細身になるし、音楽全体がこじんまりとしてしまう。
そこでLow Volume Modeをオンにすると、ぐっと低音感のパワーが出て、音楽の痩せた印象が消え去る。絶対的な音量は小さいので、大音量時と比べればややスケール感はコンパクトになるが、魅力であるボーカルの音像の立体感は遜色ないものになる。
深夜でのリスニングやPCなどで他の作業をしながらBGM的に音楽を鳴らすような使い方では聴き心地もよく、快適に使えるだろう。
セットで8万円という価格は、従来のミニコンポの相場からすると機能もシンプルで、相対的に割高感も感じるが、見方を変えて本格的なオーディオコンポと考えると、かなりリーズナブルな値段と思う。コンパクトでしかも高音質ということに大きな価値を見いだす人ならば、本機はとても魅力的なものに感じるはずだ。
(次ページに続く、「Bluetoothに加え、Wi-Fi接続にも対応 ボーズ「SoundTouch 30 Series III」 」)
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