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顧客中心の“IoC”を、セールスフォース「Dreamforce 2015」レポート 第4回

「Salesforce IoT Cloud」が実現するものとは――「Dreamforce 2015」レポート

「IoC(顧客のインターネット)」でセールスフォースが考える世界

2015年09月24日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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ゲームメーカーならIoT Cloudをどう活用できる?

 これを補足するように、セールスフォース App Cloud & IoT Cloud担当シニアディレクターのデイロン・スティール氏は、「ゲームソフトメーカーでの活用例」という具体的なストーリーを取り上げてIoT Cloudを紹介した。

セールスフォース App Cloud & IoT Cloud担当シニアディレクターのデイロン・スティール氏

 このゲームメーカーでは、「リビングルームで壁登りができる」という体感型ゲームを開発している。このゲームを楽しんでいるゲーマーの情報は、リアルタイムでIoT Cloudに送信される仕組みだ。

壁をのぼる体感型ゲームをプレイするとそこからさまざまなデータがIoT Cloudに発信される

 これにより個々のゲーマーが、このゲームを1週間あたり何時間プレイしているかもわかり、メーカーはそこから健康状態を推測するサービスを提供することが可能だ。また、しばらくプレイしていないゲーマーがどのくらいいるか、というデータもすぐに算出できる。ゲームを頻繁にやっているユーザー、しばらくやっていないユーザー、それぞれに適したアクションを起こすルールを設定すれば、有益なマーケティング行動につなげることができる。

IoT Cloudを通じて、提供中のゲームに関するさまざまな情報を収集分析することができる

 もちろんそれだけではない。IoT Cloudでなんと言ってもユニークなのは、Thunderエンジンでリアルタイムで処理を行い、それをすぐにアクションに結びつけることができる点だ。さらに、場合によってはゲーマーが身につけているバイタルデータの測定デバイス(活動量計など)や、ソーシャル情報、あるいはEコマースの情報までを統合することもできる。

 身体を動かすゲームであることから、ゲームを長時間続けていると疲れてくるのは当然だ。ゲームを休憩したり、場合によっては止めてしまうことも想定される。そこで、ゲームを続けてもらうために、IoT Cloudがリアルタイムで状況を判断し、何らかのアクションを行うことになる。

 たとえば別のコンソールゲームから収集した情報を基に、ゲーマーの友人が同じゲームをプレイしていることがわかると、ゲーマーが疲れて休憩しているときに、IoT Cloudと連動したMarketing Cloudを通じてSNSで情報を発信。友人と一緒にゲームを続けることを促すことができる。

友人が同じゲームをプレイしていることをリアルタイムに通知して、ゲームを続けるように促す

 また、Service Cloudと連動することで、ゲーマーがプレイ中に見つけた問題点を直接、メーカーに連絡するといったことも可能だ。さらにSales Cloudとの連携により、メーカーはゲーム進捗度をリアルタイムに判断して、ゲーマーにぜひ購入してもらいたい商品をお勧めすることができる。これは次のレベルに到達するための必要アイテムだったり、特別なオファーだったりするわけだ。

 IoT Cloudにより、こうした柔軟な提案が、ゲームをプレイしているときに、リアルタイムで一人ひとりの利用者に対応してできるようになる。

 「多くの企業がビッグデータを活用したいと言っているが、実際には膨大なコストをかけて収集したデータが活用できていないという問題が起きている。たとえば、ある石油精製所では、膨大な量のデータを集めてみたにもかかわらず、実際に利用されているのはわずか1%だという。つまり『データから有益な情報を得るにはどうしたらいいのか』という問題だ。それを解決するのが、Salesforce IoT Cloudだ」(ニールセン氏)

モノではなく“顧客の”インターネット、SFDCならではの狙い

 このように、Salesforce IoT Cloudは、Salesforceと数十億のイベントを連携し、人とモノがオンラインでつながっている世界から価値あるインサイトを導き出すことで、企業はあらゆる顧客に対し、最適なアクションを、最適なタイミングで起こすことができるというわけだ。

 そのほかにも、全国展開している小売企業であれば、休日セールの際にロイヤリティプログラムのステータスや在庫、販売実績などを基準にしたルールを設定することで、リアルタイムで、店内にいる顧客に対して、割引の提案をリテールビーコンから送信できるという。

 また、温度自動調節機を提供している企業であれば、天気予報やセンサー、温度設定から収集される数100万のイベントを詳細にチェックしたり、事前に設定した予算内での冷暖房空調設備の利用方法をもとに、ユーザーにプロアクティブに注意を促すことができる。

セールスフォース・ドットコム日本法人の川原均社長兼COO

 セールスフォース日本法人の川原均社長兼COOは、IoT Cloudの特徴は「顧客情報との連携」にあると強調した。

 「IoTというと、センサーなどからあがってきたデータを処理して活用するというものだが、セールスフォースでは、IoTと言わずに、IoCといっている。つまり、顧客情報と連携して価値を高めるという点を特徴としている。インシデントデータだけではなく、eメールの情報や、マイクロソフトのOfficeからのイベントデータを収集し、それらをもとに、Sales CloudやService Cloudと連携することで、プロアクティブにビジネスへと結びつけることができる。IoTを単なるデータのやりとりだけに留めず、顧客情報とのマッチングによって、新たなビジネスを創出できるのが特徴」(川原氏)

 顧客にフォーカスし続けてきたセールスフォースだからこそ実現できる提案が、Salesforce IoT Cloudということになりそうだ。

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