R9 Nanoこそ真のFiji
コスパを問うてはいけない
R9 Nano最大のネックは製品価格だ。すでに本稿掲載前にAmazonなどでもSAPPHIRE製リファレンスカードの予約が始まっていたためご存知の読者も多いだろうが、実売価格は11万円~12万円と、Fury Xとほぼ同等。
元々SP数の多いFijiは歩留まりが悪く、それがFiji搭載製品の流通量の少なさや高価格の原因であるが、R9 NanoはFijiの中でも選別品で構成されているため、価格を下げることは容易ではないだろう。
ウイッチャー3ではGTX980をわずかに上回ったが、カードの価格はほぼ2倍。もちろんこれは代理店&為替マジックの効果もあるが、高くて当然の製品なのである。
つまりR9 Nanoにコストパフォーマンスを問うてはいけない。サイズパフォーマンス最速、さらにそれがHBM搭載のRadeonである、というプレミア感を楽しむGPUなのだ。
カードサイズが小さいため極小サイズのゲーミングPCが組めるのがR9 Nanoの売りだが、Mini-ITXケースでも選択基準を少し緩めれば、290mmクラスのビデオカードも格納できる製品が普通に手に入る。R9 Nanoでないと組めない小型高性能ゲーミングPCには、吟味に吟味を重ねないと到達できない。
つまり、R9 Nanoは奥行き200mm前後のMini-ITXケースで絶対に組みたい! と言うエンスージアスト向け製品なのだ(ただエンスージアスト向けとはいえ、VRAM4GBでは画質設定にもある程度の制約が出てしまうという現実もあるが……)。
純粋に製品としての面白さだけに注目すれば、R9 NanoはFury無印はもとよりFury Xよりもバランスの良い、“Fijiの真髄が凝縮されたGPU”であると筆者は考える。
製品価格が高いこと、基板の作り込みに改善点は残されているものの、(サイズパフォーマンスやロマン的に)優れた製品であることは間違いない。R9 Nanoが現在AMDの置かれている状況を覆す起爆剤になるとは考えられないが、ここ最近パッとしなかったRadeonを再評価するに値する魅力的なGPUといえる。
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