けっこう、分からないところも多いApple Music
Apple Musicのサービスインからおよそ1ヵ月が経つ。やはり使ってみないと分からない部分が多く、使ってみたからこそ分かるよさや、使ってみてはじめて知る分かりにくさがいくつもあった。
ただ、使っていて感じたのは分かりにくい機能が多いということ。分かりにくいというと語弊があるかもしれない、説明されないと理解するのに時間がかかる機能が多い。従来の赤いミュージックアプリからあまりにインターフェースが様変わりしたのも理由のひとつだが、これまでのAppleアプリは「説明なしでも、触ってみれば理解できる」ものがほとんどだったと。新しいミュージックアプリは、操作しているうちに自然と使いこなせるシンプルさには欠けていると思う。
読者の皆様はApple Music、使っているだろうか? すぐに利用を開始して毎日使い倒している、という方にとっては釈迦に説法になってしまいそうだが、本稿では私個人がなかば恐々と使いはじめて、なんとか使えるようになったまでの所感を、大まかにまとめてみたい。アップデートを迷っていたり、分からない点が多すぎる! という方の参考になれば幸いだ。
「Connect」はまだまだこれから
まず従来のようにアプリ下部のメニューからアーティスト、アルバム、と選ぶ形式でなくなったことにはじめは戸惑う(数日で慣れてしまったが)。これはアルバム一覧上部の矢印をタップすると表れるプルダウンメニューから切り替えられるが、頻繁に「アーティスト」「アルバム」「作曲者」などを切り替えていたユーザーにとっては、相当使い勝手が悪くなったのではないかと感じる。
Apple Musicの大きな機能のひとつとして挙げられるのが「Connect」と「Radio」だ。Radioは分かりやすい。Apple公認のDJによるネットラジオと、いつでも聴けるジャンル別・無料配信のプレイリスト。Apple Music未契約でも利用できるので、自分のライブラリーに飽きを感じたときに気軽に使ってみると新しい音楽に出会えるかもしれない。
一方でConnectはまだまだ利用ユーザーが少ないのか、いまいち盛り上がっていない印象を受ける。コンセプトとしてはリスナーとアーティストがつながれるSNSのようなものとなるが、現状ではアーティスト公式のTwitterやFacebookを見た方が情報量が多い。
例えば私のフィードだと8日ほど前に英バンドのMuseがローマ公演に対するコメントを投稿しているのを最後に、更新がない。その投稿に対するインプレッションも7月27日現在、全世界で2661いいね、157コメント、82シェア。世界的に活躍するバンドに対するリアクションとしては、いささか少ないのではないだろうか。
まだまだ始まったばかりのサービスなので、未知数の部分もあるが、利用ユーザーが増えないことにはアーティスト側も積極的に投稿する気は起こさない気がする。好きなアーティストが投稿していたらコメント、いいねをしてみるといいのではないだろうか。リスナーが盛り上げると、より面白くなってくるサービスだと思う。
なおこのConnectだが、他のSNS同様、アーティストを「フォロー」してフィードに流れてくる情報を見るというスタイルになっていて、デフォルトだとiTunes Storeで購入するか、Apple MusicでMy Musicに追加するかをしたアーティストを自動的にフォローする仕組みになっている。これは左上の人物のアイコンから「アカウント」→「Following」→「Automatically Follow Artists」のオン/オフで切り替え可能だ。
ステーションを開始とは?
従来のミュージックアプリの機能は「My Music」のタブに集約されているが、どちらかというとApple Musicの一部に組み込まれたイメージで、使い勝手はそのままではない。一見して気付くのは、アルバム、アーティスト、楽曲、どのソート画面でも従来はなかった三点リーダのようなメニューが表示されていること。
この三点リーダのようなものをタップすると「マイミュージックから削除」「iTunes Storeで表示」「曲を共有」といったアクションが選択できるのだが、見慣れないメニューとして「ステーションを開始」というのがある。これはアルバム、アーティスト、楽曲の情報を元に、近いジャンル、近い曲調の楽曲を勝手に見つけてきてくれるというもので、いわばiPhoneの中にDJがいるようなイメージだ。ステーションは次々自動で選曲してくれるため、気に入らなければ次の曲に飛ばしてしまっても問題ない。
またApple Musicのライブラリーに含まれていない楽曲から「ステーションを開始」しようとしても、「この曲からはステーションを開始できません」と表示されることから、ジャンルや曲調はアルゴリズムで解析しているわけではなくデータベースを元にしているらしい。
ユーザーの嗜好を元におすすめの新作やプレイリストを案内してくれる「For You」と似ている部分があるが、ステーションの方がライトで使いやすい印象を受けた。iTunes Storeに登録されているライブラリーの中から楽曲を選んできてくれるので、未知のアーティストの楽曲に出会える可能性も、偶然どのアーティストの作品なのか知りたかった楽曲がチョイスされる可能性もある。For YourやRadio、Connectと比べると地味で目立たない機能かもしれないが、実際に使ってみると、とても面白い。
まだまだ使い込まないと分からない
ローカルに保存されている楽曲を再生するためのアプリだったものが、iTune Storeのライブラリーに登録されている楽曲を聴けるアプリになったことで、使い勝手が大幅に変わっているので、もうこれは別のアプリと割り切って使うしかない、と思ったが、しばらく使ってみるとやはり慣れる。
デフォルトでミニプレーヤーで再生される仕様など、はじめは、おや? と感じたものの、次に聴きたい楽曲をこれまでよりもスムースに選択できることの便利さに気付いた。
何より定額制配信、よしあしは抜きにしても楽である。これまで私は月に1〜2枚程度アルバムやミニアルバムを購入し、数枚はレンタルをするという生活をしていたので、月980円で最新作も聴ければ旧作も聴ける、ローカルに保存してしまえばオフラインでも聴ける、というのは本当に都合がよく、当面は契約を続けてみようという気になっている。
必ずWAVかAIFFでリッピングして、変換せずにiPhoneに入れるというこだわりはあったのだが、iPhoneで音楽を聴くのはどのみち屋外がほとんどだし、細かな不満には目をつむりたい。ただ、これは世代も関係しているかもしれないが、なんとなく、ローカルに保存されていない状態で聴いていると落ち着かないというか、楽曲の横にiPhoneのストレージ内に保存されていることを表す「iPhoneマーク」が付いていないと、なんとなく不安である……図書館で借りた本を読むときと、購入した本を読むときの違いに似たものを感じる。このあたりも慣れるのだろうか。
「知りたい」ユーザーには最高かもしれない
定額制配信のほかに、「ハイレゾ」もひとつの潮流として挙げられると思うが、ハイレゾが「これまでに聴き取れなかった細かなニュアンスまで感じ取れるもの」つまり「制作者の意図をよりリスナーに正確に届けられるもの」だとすれば、Apple Musicのような定額制配信は「これまでに知らなかったアーティストや楽曲を知れるもの」と言えるかもしれない。
10Gbpsを超えるとも言われる5Gが実用化に向けて動くなど、モバイル回線も日々進歩しており、定額制配信でハイレゾ音質というのもそれほど遠くない将来に実現するかもしれないが、当面は、定額制配信でどんどん新しい音楽を聴く、よりじっくりと聴きたくなればハイレゾ版やCDを購入する、というスタイルがひとつの定型になるのではないだろうか。
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