この記事は『ダジャレの裏で日本にしかない技術あり、コルグ「チュナ缶」のこだわりとは』の続きです。前回と合わせてご覧ください。
チューナーを缶に入れて「チュナ缶」。この一見バカバカしいダジャレ商品に、実はすごい技術が使われていたのだ。というびっくり仰天のインタビュー、第二弾。
※前回までのあらすじ チュナ缶を作るにあたって、コルグは入れ物として使える缶を探していた。ツナ缶のダジャレである限り、プルトップ缶以外は話にならない。しかし大手製缶メーカーには「ワンロットの数が少なすぎる」と相手にしてもらえない。困ったあげく、最後に行き当たったのが大田区の谷啓製作所だった。この小さな町工場は、開けたフタや缶で手を切らない「ダブルセーフティープルトップ缶」の発明で世界的に知られていたのだった。
ツナ缶のような「フルオープンエンド」缶は、缶切りがいらず、プルリングを引っ張るだけで開けられるし、開けるときのパキュッという音も気持ちいい。でも、うっかりするとフタや缶の切り口で指を怪我をしやすい。だから訴訟社会のアメリカではPL(Product Liability=製造物責任)法で、缶を売ったメーカーが訴えられるケースも後を絶たなかった。
谷内社長がダブルセーフティープルトップ缶の開発に着手したのは昭和58年(1983年)。1970年代から、各国の大学や研究所で安全な缶が研究されてきたというが、谷内社長はコンピューターも使わず、金属の性質を知り尽くした長年のカンのみで、世界で最初にこの問題を解決した。
この谷啓製作所の缶なら安全性も高く、ミュージシャンが使うチューナーの入れ物としてもいい。こうしてダジャレに全力で取り組むコルグも変な会社だが、谷啓製作所もその上を行くユニークな会社だった。今回は谷啓製作所のお二方に、ダブルセーフティープルトップ缶が生まれる経緯から、その缶を使ったある独自製品の開発までをうかがった。
(次ページでは、「缶はどう発想して作られたのか」)
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