SAS Institute Japanは6月4日、グローバルで展開しているアナリティクス人材育成イニシアチブ「SAS Analytics U」を、日本でも本格的に展開開始すると発表した。無償版/低価格版のソフトウェアや無償Eラーニングコンテンツの提供、ユーザーコミュニティとの連携などを通じて、学生や社会人のアナリティクススキル習得を支援する。
SAS Analytics Uは、SASが昨年(2014年)5月からグローバルで展開する、アナリティクス人材育成のための取り組み。日本でも一部はすでに開始していたが、今回、あらためて包括的な取り組みへと拡大する。
人材の増加に向け、SASでは学生/社会人を問わずアナリティクスの基本スキルを浸透させる「底辺を広げる」取り組みに加え、学生と高等教育機関向けには「専門性を高める」こと、さらにアナリティクスを学ぶ人の「コミュニティ」形成を進めるという“3本柱”で取り組んでいく。
具体的にはまず、無償版の統計ソフトウェア「SAS University Edition」について、これまでのダウンロード提供に加えて「AWS Marketplace」(Amazon Web Servicesのマーケットプレイス)での提供も開始する。AWSの無償利用枠と併せて活用すれば、ローカル環境だけでなくクラウドでも、コストをかけずにSASソフトウェアを使った学習や研究が可能になる。
加えて、無償版のSaaS「SAS OnDemand for Academics」も提供を開始する。使用できるデータ容量が最大5GB(授業使用ならば7GB)に制限されるものの、こちらは統計に加えてデータマイニングやフォーキャスティングといった機能も利用可能だ。
さらに、教育機関(学生および教職員)向けの有償ライセンスプログラムを刷新し、SAS製品群を安価に導入できるスイート製品「SAS Educational Analytical Suite」を提供開始した。従来のアカデミックライセンス比で、およそ50~90%の値下げとなる。
そのほか、Eラーニングコンテンツ(英語版)の無償提供も行う。このコンテンツの日本語ローカライズも順次進めていく方針。また、国内ユーザーコミュニティ「SASユーザー会」との連携により、大学や企業へのAnalytics Uの知名度向上を進める。さらに、グローバルで3万人が登録するオンラインユーザーコミュニティ「Analytics U Online Community」への参加も促すとしている。
データ分析の素養を身につけた人材は「大学卒業生のわずか0.5%」
同社マーケティング本部 兼 ビジネス推進本部 本部長の北川裕康氏は、顧客企業側ではすでにデータアナリティクスの「活用段階」へと足を踏み入れているが、一方でアナリティクスの知識とスキルを身につけた人材は不足しており、需要と供給のギャップは今後さらに拡大するだろうと指摘。その課題解決のため、SASはグローバルでSAS Analyitics Uを展開していると説明した。
「アナリティクス人材には『IT』だけでなく『サイエンス』の素養が必要だが、このサイエンスはなかなか簡単には身につかない。大学時点からしっかり教育していかないと、アナリティクス人材が育っていかない」(北川氏)
特に日本は、GDP規模から考えるとアナリティクス人材の供給が不足している。同社 公共・公益営業本部 本部長の阿部浩也氏は、データ分析にかかる能力を身につけた大学卒業生の数が、日本では3400人(2008年単年)しかいないという調査データを示した。
「この3400人というのは、大学卒業生約60万人中のわずか0.5%程度。日本よりGDPの高い米国や中国だけでなく、インドやフランス、英国といった国も、日本より多くの人材を輩出している。日本はデータ分析において『後進国』であると言わざるを得ない」(阿部氏)
昨年5月からのAnalytics Uの取り組みにおいて、無償版ソフトウェアのSAS University Editionは27万2000回のダウンロード、無償SaaSのSAS OnDemand for Academicsには3万4000回のアクセスがあったという。SASの認定プロフェッショナル数は8%増加した。
北川氏、阿部氏は日本における目標値は明言しなかったが、「米国では約半数が学生、残りの半数が一般の方(社会人)。日本でもそのくらい(の比率)にはキャッチアップできれば」(阿部氏)としている。