斬新なのに驚くほど快適
まずイヤフォンとしてのデザインが斬新です。でも、決して奇をてらったものではなく、エルゴノミクスとともに、着用時の見せ方まで考えられているところに感心します。ケーブルも含めて全体として軽く、気負わず使えるところも好印象です。
ただ、通常はあまり気になりませんが、このイヤフォンはほかに比べて、ノズルを差し込む位置やちょっとした角度の変化で音質が変わりやすく、そうした面ではかなりデリケートなイヤフォンとも言えます。これはノズルの長さに起因するはずです。
しかし、ケーブルや分岐パーツ、ストッパーなども含めて軽くできているので、ハウジングに重量物をぶら下げている感じにはなりません。イヤーモニターでやるようなケーブルを耳にかけるスタイルでも良かったはずですが、その必要はないということです。
そうした軽さのおかげもあって装着中は快適で、ハウジングが耳に当たる感覚もなく、長時間使っても疲れません。音漏れは軽微で、大きなサウンドホールを開けてチューニングしているわけでもないので、他の密閉カナル型と同等の遮音性もあります。
ただ人によっては、その音質にガッカリしてしまうかもしれません。
最近のカナル型にない刺激の薄さが魅力
「ダイナミックBA」というドライバーの名前のおかげで、低域も高域も豊富で広帯域感を狙った音、といったものを想像してしまいがちですが、OPUS1のファースインプレッションは、シングルのバランスド・アーマチュア・ドライバーを使ったカナル型に近いものでした。
トータルバランスのよさを狙ったチューニングで、無理のある特性を得ようとして破綻していないところが魅力です。フルサイズの開放型ヘッドフォンのようなあっさりした音と音場感、それに解像感をプラスしたような素直な音は、最近のカナル型イヤフォンにはないタイプのように思えます。
ただ、一般的なバランスド・アーマチュアのイメージからすると、かなりハイが足りないように感じられるでしょう。聴き込んでいくうちに、カナル型にありがちな6kHz前後のピークを感じないことと、それらの成分で埋もれていた音が聴こえていることを発見するのですが、店頭試聴でこれがわかるかどうかは、ちょっと微妙かもしれません。
低域の音圧感についても、ちょっと裏切られるでしょう。確かに低音がバフバフ来るようなイヤフォンではありませんが、普通のイヤフォンではレスポンスの薄い、ごく低い周波数の音まで実際には再生しています。ベースの芯の音がキックの音圧に隠れてしまわず、はっきり聴き取れるところも美点です。
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