ファーウェイと聞いても、数年前なら日本では知らないという人が多かったが、国内でも少しずつ認知が広がっている。それもそのはず、同社は2007年に日本市場で端末の展開を開始し、スマートフォンのみならず、ルーターなどの各種端末で年間500~600万台を販売しているのだ。
実際、日本を出ると地元中国はもちろん、世界的にブランドとなっておりInterbrandのブランド調査では中国企業として初めて94位にランクインしている。
スマートフォンベンダーの顔ぶれが、海外とは異なる日本ではファーウェイはどのような戦略をとるのか。カギを握るのはMVNOとSIMフリー市場のようだ。ファーウェイの端末部門で日本市場を統括するHuaweiデバイス日韓リージョンプレジデント兼ファーウェイ・ジャパン副社長の呉 波(Oliver Wu)氏に話を聞いた。
2014年の下半期のみで
MVNO向けSIMフリースマホでシェア50%を獲得
――MVNOにより日本のモバイル市場がオープンになってきた。ここでの戦略は? MVNO向けにSIMフリー端末を投入して1年が経過するが、ここで学んだことは?
Wu氏(以下同) 日本のMVNOはローコスト・ロースペック(安かろう悪かろう)という印象が強い。ファーウェイは2014年に日本でSIMフリー端末を投入しているが、最初からローコスト・ロースペックではないことを強調してきた。
日本でSIMフリーとして2014年に出した「Ascend P7」「Ascend Mate7」はグローバル向けフラッグシップモデルで、高いスペックを持つ。これを手頃な価格で提供する。このことで日本の消費者は、MVNOでも素晴らしいスペックの端末を低価格で手に入れるようになった。ファーウェイがこれを実現している。今後もSIMフリー市場にプレミアム端末を安価にという方針は継続していく。
――SIMフリー端末の販売台数は?
台数は明かせないが、事前で社内で立てていた予想をはるかに上回った。調査会社のデータによると、2014年の日本のSIMフリー市場でファーウェイは50%以上のシェアを占めている。我々は2014年6月からスタートしたので、実質下半期のみでこの成績を収めることができた。
――MVNO強化により、既存のキャリアとの関係に影響は?
特に大きな影響が出たということはないし、変化はない。というのは、我々は日本の通信事業者とは端末に限らず、ネットワークインフラにおいてもビジネス関係があるので。この点は優位だ。
――Androidは多数のベンダーが採用しており、差別化や収益を上げることが難しい。そこにファーウェイはどのように取り組んでいくのか? シャオミは中国で安くて高スペックのAndroidスマホを投入して成功している。
ファーウェイはイノベーションを重視している。2014年には、世界でもっともイノベイティブな企業100社を選ぶ「Innovation Global 100」にも選ばれた。
――イノベーションでの取り組みを具体的にあげると?
ハードウェアもソフトウェアも含む。現在、端末メーカーで自社開発したチップセット(HiSilicon)をもっているのはファーウェイのみだ。Qualcommより半年ほど技術的に先行しており、昨年すでにカテゴリー6対応のものを発表済みだ。Ascend Mate7ではそのチップが使われている。
NTTドコモと共同で発表した、下り最大225Mbpsでの通信が可能なルーター「Wi-Fi Station HW-02G」でも、HiSiliconのチップセットが使われている。
Androidの差別化は難しいといわれているが、ファーウェイはさまざまな取り組みを展開している。現時点で伝えられないことばかりだが、今後さまざまな企画を計画しているので注目してほしい。
――グローバルでのファーウェイのシェアは3位から4位に下がった。スマートフォン市場はますます激しい戦いになっている。競合をどう見ている?
ファーウェイの目標は単なるシェアの順位ではなく、消費者にすばらしい体験を提供する製品を開発し、届けることだ。端末業界の競争は激しい。かつてのNo.1(マイクロソフトに買収されたNokia端末事業部)は消えてしまった。だから1位を追い求めること自体には意味はないと考える。
我々の戦略は消費者の皆さんに喜んでもらえる製品の提供だ。もちろん、知的所有権を尊重しながらそれを実現していく。ここはシェアを急速に伸ばしている一部のベンダーとは異なる。
――グローバル戦略の重要な柱にブランドがある。ハイエンド製品は中国国内の競争、そしてAndroidベンダー間の競争で差別化としているように見えるが。
そのとおりで、ファーウェイの端末戦略はプレミアム、ハイエンド戦略をとっている。グローバルで見ると、2014年のスマートフォン出荷台数は7500万台に達した。そのうち中国は50%以下で、ファーウェイはグローバルベンダーだ。170ヵ国で事業展開しており、端末では今年もハイエンド機種を投入していく。
日本市場での目標はサバイバル
キャリア向け、MVNO向け、法人向けを今後も注力
――日本でのブランド認知は必ずしも高いとはいえない。日本での取り組みは?
2014年10月に開催された「CEATEC JAPAN」で、日本語での“ファーウェイ”というブランドを打ち出した。“Huawei”というスペルは正確に発音するのが難しいので、日本のユーザーに正しく覚えてもらおうということでカタカナ書きでロゴを作った。
12月にもAscend Mate7の製品発表会を開催した。通常の発表会はメディア向けだが、この発表会は消費者の方も参加できるようにした。この発表会は合計300人が参加、メディアが100人、提携企業が100人、残り100人はファーウェイの日本のファンが集まった。このような反応をいただいたので、今年はさらに日本でファンコミュニティーの立ち上げに力を入れる計画だ。
――日本市場での目標は?
サバイバル、生き残ることだ。
日本はガラパゴスと言われた市場で、iPhoneが上陸後、iPhoneが日本市場を独占している。Androidメーカーはここでは厳しい状況だ。そういう事情から、日本市場ではまず生き残り、それから競争していく。
――そこではMVNOが一番有効な戦略と考える?
そうともいえない。通信キャリア、MVNO向けに加えて、法人向けのタブレットもやっている。この3つが3分の1ずつになっている。どのビジネスも我々にとって大切で、今後も強化していく。