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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第130回

米国はダメでも、欧州市場で確実にプレゼンスを高めるファーウェイ

2015年07月08日 11時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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 6月に連続してドイツに行く機会があった。そのうちの1回はHuaweiの通信事業の年次イベントである。テーマは”Industry 4.0”。エンタープライズ分野の最新トレンドでIoTをビジネスで活用することで新しい産業革命を、というものだ。

 Industry 4.0はドイツの政府と企業が主導したこともあり、当地での開催となったようだ。今回はこのイベントなどドイツ滞在を通じて感じた欧州でのHuaweiのプレゼンスを取り上げてみたい。

ファーウェイがミュンヘンに構えるラボでは、最新のアンテナ技術などの開発を進めているという

SAP、Audi、Deutsche Telekom
Industry 4.0イベントにドイツ企業が集結

 まず、Huaweiの通信事業(無線アクセスなどのインフラ機器)が欧州市場に浸透していることに驚いた。

 Industry 4.0を推進する重要なプレイヤーである地元ドイツのSAPとは3月のCeBITで提携を発表しているが、ミュンヘンで開催されたHuaweiのイベントではSAPの技術トップBernd Leukert氏(エグゼクティブ・ボード・メンバープロダクト&イノベーション担当)が赴いてスピーチを行ない、Industry 4.0に向けた自社のソフトウェア技術基盤をアピール。通信分野をカバーするHuaweiとの提携によりIoTソリューションの提供を加速させていくとした。なお、SAPはHuaweiの競合であるEricssonともIoT(”マシン間通信”)で2013年のMWCで大々的な提携を発表している。

 またDeutsche TelekomのITサービス子会社であるT-SytemsはHuaweiのイベントを利用してパブリッククラウドの大々的ローンチを行ない、Huaweiなしでは実現できなかったと持ち上げた。自動車メーカーのアウディも自動運転カーでの取り組みを話した。HuaweiはAudiとは5月、「Audi Q7 SUV」向けの無線モジュール提供などで提携を発表している。

 これらそうそうたる企業に加えて、地元バイエルン州からは首相府長官Marcel Huber博士が参加し、イベントに花を添えた。

欧州経済の救い主?
中国企業による投資頼みの欧州

 ミュンヘンには、Nokiaがドイツ企業のSiemensとの合弁で、Nokia Siemens Networksとして展開していた無線インフラ事業の拠点もある。だが、そのミュンヘンで開催されたイベントからは、ドイツの企業と政府にとって、Huaweiが重要な技術企業となっていることを印象づけた。ほんの数年で大きな躍進を遂げたことを感じる。

 Huaweiは通信企業にとって、欧州ベンダーがやりたがらない暑さや寒さが過酷な地域などをやってくれるベンダーであり、その最大の魅力は価格だった。後発ではあるが、中国市場からアフリカなどの地域で国際的に知名度を上げて欧州市場を攻めた。2004年頃にオランダ・アムステルダムで開催された無線関係のイベントで、実に多数のHuawei社員が参加していて驚いたことがある。

 その頃から、欧米の通信インフラベンダーは激動期に入る。NokiaはSiemensと合弁会社を作り、その後Nokia Solutions Networksとなり、現在のNokiaに至る。米国のLucent TechnologiesはフランスのAlcatelと合併してAlcatel-Lucentが誕生、カナダNortel Networksは破産した。

 最新の動きでは、NokiaがAlcatel-Lucentを買収することで合意したことを発表している。大型の買収を経験していないのはEricssonとHuaweiのみだが、Ericssonもソニーとの合弁でやってきた端末事業を切り離すなどの大きな変化を経験している。

 産業構造の変化に伴い慢性的な雇用問題に苦しむ欧州にしてみれば、R&Dの設立などHuaweiが生み出す雇用創出はウェルカムなのだ。

 Huaweiはチップ、端末からサーバー、そして無線インフラまでを擁し、それぞれの分野で拡大してきた。Huaweiは2000年にスウェーデンに欧州初のR&Dを設立、その後15年で8カ国に18のR&Dセンターを作った。

 欧州の研究部門のバイスプレジデントを務めるWalter Weigel氏(Huawei European Research担当バイスプレジデント)によると、合計で1200人分の雇用を創出したという。2013年の欧州特許申請件数は2013年の1077件から2014年には1600件に、11位から5位となった。

 Huaweiにしてみれば、欧州での快挙はインフラ分野でのビジネスを展開していない米国に対する暗示的アピールになりそうだ。すでに大きく報道されているとおりに、米国は2013年、Huawei創業者の任正非(Ren Zhengfei)氏が人民解放軍に所属していたことから、政府の通信インフラで同社の通信機器を利用しないようにとする報告書を出している。


(次ページでは、「安価な端末として欧州市場に食い込むファーウェイ」)

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