低域の秘密はMaxxBass
実際に音を出して驚くのは、低域の量感の凄まじさ。先にも述べましたがTREK Flexのドライバー構成は、40mmのフルレンジドライバー2基と、90×42mmのパッシブラジエーターという、このサイズのBluetoothスピーカーでは標準的なものです。
ですが、パッシブラジエーターと合わせたチューニングとしても、低域の量感はそのイメージを超えています。
そのTREK Flexの低音の秘密は「MaxxBass」が載っているところにあります。音楽制作関係のみなさんならご存知の、Waves AudioがDAW向けのプラグインなどで売っているものと同じ技術が、このスピーカーには使われているわけです。
このクラスの卓上用の小型スピーカーは、もともと低域の再生限界が十分ではないため、DSPによる低域のブーストは普通に行なわれています。ただ、物理的に再生できない帯域をいくらブーストしても、信号が濁るだけで意味がありません。
MaxxBassは単純に低域をブーストするのではなく、小型スピーカーでは再生できない帯域の信号に、小型スピーカーで再生できる帯域の倍音成分を付加し、まるで元の周波数の音が鳴っているかのように錯覚させているわけです。
わかりやすく言うなら、40Hzの信号は再生できないので、その倍の80Hzの信号を乗せてみたら、人は40Hzが鳴っているように錯覚する、といった理屈です。原音忠実再生派はカンカンになって怒りそうですが、こうした小型スピーカーで無理なく低域を聴かせるには、有効なアプローチでしょう。
ただ、TREK Flexの場合は、ちょっと効かせ過ぎかなというきらいはあります。設定を調整できる仕組みがあればいいのですが、それは今のところ用意されていません。
(次ページでは、「高域の指向性を改善する仕組みも」)