並列演算のための2つのFPUと
1GBのDDR SDRAMで1枚のカードを構成
次がFPUである。Blue Gene/LではFPUを2つ搭載しているが、これはQCDOCのFPUが2つ並んでいるというよりは、QCDOCのFPUの幅を2倍に増やした形だ。
内部はプライマリーとセカンダリーの2系統に分かれているが、両方のFPUで同一の命令を実行する。言ってみればFPUをSIMD風に拡張した設計である。
ただ多くのSIMDが、例えば16Bytes幅なら単精度演算×4もしくは倍精度演算×2を同時に実行できるのに対し、Double-hummer FPUは単精度でも倍精度でも1サイクルあたり2つの演算命令しか実行できないのが大きな違いだ。
演算命令の中にはMAC演算(乗算+加算)も含まれており、これを実行する場合は1サイクルで4演算なので、700MHzならば2.8GFLOPSとなる。ちなみにこのDouble-hummer FPUそのものは800MHzでの動作をターゲットに設計されたそうである。
このBlue Gene/Lであるが、1枚のカードにチップ2つとDDR SDRAMがまとめて搭載される。メモリーはノード、つまりBlue Gene/Lのチップ1つあたり512MBとされる。
カード1枚あたりの消費電力は15Wとされるが、Blue Gene/Lのチップそのものが1個あたり5~6W程度(コアあたり1Wで合計2W、それ以外に4MBのeDRAMや、後述するI/Oリンク用にそれなりに必要となる)、DDR SDRAMが1GB分でやはり3~4Wといったところだ。
このカードをCompute Cardと称している(他にI/O専用のI/O Cardも存在する)。このCompute Cardを16枚装着したのがNode Cardである。
キャビネットには、このNode Cardを16枚装着する。この段階でノード数は1024(コア数は2048)、メモリーは512GBに達する。演算性能はこの1キャビネットで5.6TFLOPSに達するわけで、理論性能だけで言えばASCI Blue Pacificの1.5倍の性能がわずか1キャビネットに収まってしまう格好だ。
もっとも、1つのCompute Cardが15Wに収まるといっても、これを1000枚も集めたら15KWになるわけで、冷却方法には工夫が必要である。チップ1個あたりの発熱は5~6Wなので、2つ上の画像に示すようにパッシブのヒートシンクだけで十分まかなえるが、これに対してそれなりに冷却風をあてる必要がある。
そこでキャビネット側面には60個の冷却ファンを設置し、さらにシャーシを斜めにすることで冷却効果を高める工夫がなされた。
下の画像には説明が必要だろう。上の画像で示したキャビネットは、下の画像の青い部分に収まる。その左右に、斜めになった給排気エリアがくっつく形だ。
この場合、キャビネットには右から吸気(底面から冷気を供給)し、キャビネット内で熱せられたエアーは左側に流れ、そのまま上面に出ていく格好となる。
この斜めの板の角度は10.1度ほどになるが、シミュレーションによれば角度が0、つまり斜め板が無い状態でのキャビネット内温度は最低でも38.2℃(一番高い場所では50℃以上)だったのが、斜め板を入れることで最低27.0度まで下がるようになったとしている。
いわば対流をうまく利用して冷却を行なっているわけだが、この結果としてBlue Gene/Lの筐体は外から見ると斜めになっている。
→次のページヘ続く (性能的にも商業的にも大成功)
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