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言語バリアフリーを目指す、羽田空港で情報ユニバーサルデザイン高度化実験

2015年12月05日 09時00分更新

文● オオタ/ASCII.jp

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空港で混雑するのは勘弁したいもの。羽田空港で混雑緩和や多言語誘導案内の実験が開始された

 東京国際空港ターミナル、日本空港ビルデング、NTT、パナソニックは、訪日外国人とユニバーサルデザインを同時に対象として、「音」「光」「画像」「無線」などによる技術を活用した情報ユニバーサルデザイン高度化の共同実験を開始した。

 実験の背景として、2020年のオリンピックイヤーに向けて訪日外国人の増加や少子高齢化の進展が想定されることが挙げられている。訪日外国人や車椅子・ベビーカーでの利用者や高齢者などの空港を起点とした移動をサポートすることが目的となる。

東京国際空港ターミナルの代表取締役社長 土井勝二氏

 東京国際空港ターミナルの代表取締役社長 土井勝二氏は、「ユニバーサルデザインの高度化は、東京国際空港ターミナルが建設中の頃からユニバーサルデザインの対応に取り組んでいた」と語る。2010年の開業から5年が経ち、早くも何度も改良を続けてきたという。

 今回の実証実験では、NTTが「画像解析技術を用いたかざすUIによる情報提供」「ビッグデータ解析技術を用いた動的サインによる人流誘導」「音声処理技術による音サインの明瞭化」を実施する。

NTTの実証実験内容

パナソニックの実証実験内容

スマホをかざすだけで情報を多言語翻訳

 まずNTTの「画像解析技術を用いたかざすUIによる情報提供」は、到着ロビーの看板・案内板や、店舗や料理サンプルにスマートフォンのカメラを向けるだけで、指定した言語で情報を表示できるようにするもの。

店舗や料理サンプルにスマートフォンのカメラを向けるだけで、指定した言語で情報を表示してくれる

 これには、さまざまな角度から撮影したり一部が隠れた状態でも被写体を認識できるようにする「アングルフリー技術」が採用されている。アプリ側で事前に正面や斜めなどから1~数枚程度の画像を撮影し登録しておけばよく、低コストで導入できる点が強みだという。

海外からの渡航者は、海外の不慣れな土地で母国の言語で誘導案内が見られる

 「ビッグデータ解析技術を用いた動的サインによる人流誘導」は、空港の混雑状況を先読みし、動的な案内サインを表示したり、音声アナウンスで対応しているシーンに示す情報を視覚化することで、混雑を緩和させる仕組み。

羽田空港の出発口は2ヵ所用意されている。将来的には混雑状況に応じて比較的空いている出発口がガイドされるようになる

 最後の「音声処理技術による音サインの明瞭化」は、音声アナウンスのトーンを周囲の雑音に合わせて変化させることで、音量を上げる以外の方法で聞き取りやすくするシステム。これは空港内の音サインを対象に視覚障がい者に協力してもらい被験者実験を行ない、体感ヒアリングや行動測定することで実用化への課題を明確にしていくという。

ただ音声アナウンスの音量を大きくしただけではそれ自体が周囲に対する雑音になる。この技術は音量を上げるのではなくトーンを調整して雑音の隙間を縫うイメージが近い

GPSが届かない場所でも正確に誘導できる案内アプリ

 一方のパナソニックは、「光ID技術を使用した商業エリアなどの空港施設の認知検証」「Bluetoothビーコンを使用した施設案内誘導検証」を行なう。

 「光ID技術を使用した商業エリアなどの空港施設の認知検証」は、パナソニック独自の光ID技術を使用したもの。光ID発信機を組み込んだ照明看板や照明器具などからスマートフォンをかざすだけで多言語での店舗情報を取得できるようになる。電波を使用していないため、電波が入り乱れた混雑した環境や大勢が同時に情報を取得できる利点がある。

アプリを立ち上げてスマホをかざすだけで母国語でガイドを表示できる

 最後の「Bluetoothビーコンを使用した施設案内誘導検証」は、羽田空港内に指向性のビーコンを設置し、ナビゲーションアプリを使用してスムーズに誘導できるか検証するもの。従来のビーコンでは天井などに設置した場合、隣接して設置するビーコンとの電波干渉などが発生し、正確な位置情報を取得できなかったという。パナソニックが独自開発した電波に指向性を持たせたビーコンを使用することで、電波の拡散を制御し、GPSの届かない屋内でもスムーズな誘導を可能にさせる。

画像と矢印で次のランドマークを表示しながら目的地をナビゲーションしてくれる

 アプリでは、最初から目的地までの道を表示させるのではなく、目的地の途上に点在する店舗などのランドマークを逐次案内しながらナビゲーションしてくれる。「2つ目の十字路を左折」などと表示されるより直感的に理解しやすく工夫されている。

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