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イスラエルITいろはにほへと 第12回

イスラエル発、世界シェア80%の高度運転支援システム

2014年11月14日 09時00分更新

文● 加藤スティーブ(ISRATECH)

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前方物体の形状からクルマ(乗用車、バス、トラック、オートバイ)と歩行者(人、自転車)を区別して識別する。相対速度、相対加速度などから2.7秒以内に衝突する危険性があると判断した場合、警報音と赤いアイコン表示で警告する前方車両衝突警報のほか、車線逸脱警報、前方車間距離警報、低速時前方車両衝突警報、歩行者衝突警報といった5つの機能を備える。

基本技術は一人の天才が創造

 2014年8月1日Mobileye (モービルアイ)は、NYSEへ上場を果たした。調達額は日本円で約900億円とされ上場初日、株価は48%上昇し注目を浴び、現在は時価総額110億ドル(約1兆2000億円)ほどあり、イスラエル企業として過去最大のIPOとなった。

 このモービルアイは単眼カメラでの衝突事故防止・軽減を実現し、高度運転支援システム (ADAS) の発展に貢献するテクノロジーカンパニーである。同社は、衝突防止から自動運転へとビジネスを移行している。

モービルアイは、前方のクルマの輪郭認識(左右テールライトや後輪と地面との接点)や、車線認識を白黒のコントラストで認識する。またカラー映像と異なり、3原色情報の同時処理のための高速CPUも不要、シンプルかつ低コストのシステムを採用する。

 人間の目は、ふたつの目で物事の対象までの距離を測るが、モービルアイは「単眼のカメラ」でこれを実現させた点が、革新的であろう。単眼カメラであれば、パッケージとキャリブレーションが楽になり、部品費用も安く抑えられる。

 また、これをカメラベースで実現しているために、車線と歩行者、目的物の判別等をカメラ単体で行うことができる。なんと、この技術はAmnon Shashua教授たった一人により開発されている。

専門知識を持ち認定を受けたインストーラーが特別なソフトウェアと機器を使って車両のフロントガラスに取り付ける。カメラが前方の車両・オートバイ・歩行者・自転車・車線を検知し、衝突の危険や車線の逸脱を判断すると、アイコンと警報音でドライバーに警告する。

 このモービルアイを日本で展開するジャパン・トゥエンティワンの加藤充氏曰く、「グーグル、フェイスブック、アップルとIT業界では、世界を席巻する企業は多かった。これまで自動車分野で世界を席巻する企業は出てこなかったが、モービルアイはその存在になりえるかもしれない」と評する。

 その言葉の通り、現在世界で搭載されている高度運転支援システムの80%以上のシェアを持つ。モービルアイを搭載した車は、日本の大手自動車メーカーを含め15社以上150車種、世界の自動車メーカーのほとんどすべてに搭載実績を持ち、2014年秋時点でこの分野では、世界最大の生産量を誇り330万台以上へ搭載されている。

 現在、世界の総自動車保有台数は、11億台以上、シェアの高さからこれから登載社数は右肩上がりに増えていくことが予想される、また「衝突防止から自動運転」へ、今後のロードマップを描いており、自動車の世界でハイテク企業が世界を席巻する初めての例になることが注目される。




筆者紹介──加藤スティーブ


著者近影

イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40〜60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。


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