事例もテクノロジーも満載!NTT Com Forum 2014 第5回
NTT Comの現地法人が語るグローバル進出成功への鍵
若くて親日なベトナム!成功のコツはギャップを楽しむこと
2014年10月13日 09時00分更新
進出前に聞いたベトナムのいい話は本当か?
優秀な労働力、親日、リスクフリー、好立地、急成長など、さまざまなレポートでは、ベトナムのメリットばかりが強調される。しかし、ベトナムは課題も多い。鈴木氏は、こうしたリスクは事前に盛り込んでおくべきだと説明する。
まず通信品質があまり高くなく、1ヶ月で43分程度の故障が発生する可用性。中国、マレーシア、タイ、フィリピンに劣り、インドネシアやインドよりは優れているというレベルだ。「通信ケーブルの配線が雑だったり、架空されているケーブルに洗濯物が干されていたりする。やはり人為的な問題は大きい」(鈴木氏)。
また、国際回線の接続障害が大きいのも悩みどころ。ベトナムは陸揚げされている海底ケーブルの数自体が4本と少なく、しかも大容量のAAG(Asia American Gateway)に大きく依存している。そのため、AAGにトラブルが起こるとベトナムのインターネット全体に大きな影響が起こる。実際、2013年、2014年には連続してケーブルの切断事故が起こり、インターネット障害が発生。「海底ケーブルの断線に関しては、修理するまで手の打ち所がない」(鈴木氏)とのことだ。
電力インフラも万全とは言えない。需要に対する供給は追いついてきたものの、2013年5月には南部20州以上、隣国カンボジアのプノンペンまで含む大規模な停電が発生。完全復旧まで8時間かかった停電の原因は、樹木の移植作業を行なった際に、クレーンが持ち上げた樹木が送電線に接触したという事故で、電力システムの脆弱性が露呈されたという。
さらに人材面でも問題に直面する。鈴木氏は、「ベトナム人は情報共有文化が希薄なので、辞める時も引き継ぎをしない。横領や盗難、麻薬などに手を出す人もいるし、そもそも会社へのロイヤリティがないので、すぐ辞める」と指摘する。違法ソフトウェアの利用率も81%と、中国よりも高い。不正コピーで欧米企業から訴えられる例も起こっている。
“問題”ではなく“ギャップ”を埋める
そもそも日本人とベトナム人は資質も大きく異なる。ベトナム人から見て日本人は礼儀正しく、真面目で、几帳面だが、一方で働きすぎる、細かすぎる、融通が利かないというネガティブさも持ち合わせる。しかし、長所を裏返せば短所になるため、日本人はベトナム人から学ぶことも多い。鈴木氏は「両者にあるのは“問題”ではなく、“ギャップ”。相互のスタイルを尊重し、ネガティブポイントをカバーすることで乗り越えられる」と指摘する。

問題ではなくギャップ。ICTでカバーできることも多い
こうしたギャップを乗り越えるため、ITの利用価値は大きいという。たとえば、ベトナム人がすぐに辞めるのを前提に、情報をあらかじめドキュメント化しておく。作業の俗人化や賃金の高騰を前提に、ERPやワークフローを導入し、手作業を極力減らす。さらに脆弱なインフラ事情を補うべく、データセンターの活用やネットワークの冗長化などを進めるといった施策だ。
NTTコミュニケーションズでは13年に渡るベトナムでの実績を活かし、ギャップを解消するソリューションを提供するという。鈴木氏は、「ベトナム進出時からご相談いただき、拡大までお手伝いさせていただく。ベトナムだけではなく、アジアさらにはグローバルまでカバーできる」とアピールし、講演を締めた。

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