事例もテクノロジーも満載!NTT Com Forum 2014 第8回
設備監視や故障予兆、デマンドレスポンス、セキュリティまで
将来は発電所まで仮想化?意外と近いクラウドとインフラ管理
2014年10月15日 09時00分更新
「クラウド」と「インフラの監視システム」や「制御システム」。これまでほとんど接点のなかった2つの分野を結び合わせることで、社会インフラや産業インフラのより効率的な監視、管理を実現したい……。
10月9日・10日に行なわれたNTTコミュニケーションズの「NTT Communications Forum 2014」のセッション「産業インフラと生活インフラの安心安全を守るICTソリューションの未来像~設備監視&故障予知・デマンドレスポンス・制御システムセキュリティ~」では、情報システムだけでなく、広くインフラの管理にクラウドを活用するという取り組みが紹介された。
クラウドとVPNをインフラや制御システムの監視業務に活用
情報システムの世界においてクラウドは、コスト効率の良さや柔軟性、高い生産性を実現するといった理由から広く普及してきた。同じようにインフラ管理の分野でも、省エネルギー/省資源、センサーやロボットを活用した業務効率化、保守点検の最適化によるサービス向上といったニーズを背景に、クラウドをはじめとするICTソリューションの活用に注目が集まっているという。
インフラ管理システムや制御システムはまた、設備の老朽化やサイバー攻撃の増加、自然災害の増加といった課題にも直面している。「あらゆるインフラをICTを活用して共通管理することにより、さまざまな要因によって生じるリスクやコストを削減したいという相談が私どものところにも増えてきている」と、NTTコミュニケーションズ 技術開発部 担当課長の境野哲氏は述べた。
そこで同社が取り組んでいるのが、セキュアなネットワーク、すなわちVPNとクラウドをワンストップで提供するソリューションだ。
とは言うものの、情報システムでさえ、クラウドへの全面的な依存に抵抗を示す企業は少なくない。ましてや、社会インフラに関連するシステムや制御システムともなればなおさらだ。
境野氏によると、同社もそうした懸念はもっともだと考え、クラウドから直接インフラなどを制御するのではなく、運用や監視、ログ解析といった部分を担う仕組みを提案している。上下水道や電力などのインフラにはじまり、道路や車、ビルや店舗、工場、あるいは医療機器に至るまで、さまざまな分野の管理にクラウドを活用することで、多様な使い方をサポート。大量のユーザー、ビッグデータを扱いながら、インフラ管理に要するコストを下げていくという構想だ。
きめ細かなデータ収集で電力消費をリアルタイム制御
この取り組みの一例として境野氏が挙げたのが、ビルのエネルギーマネジメントだ。
電力小売りの自由化に伴い、新電力会社(特定規模電気事業者)には「30分同時同量ルール」という義務が課せられる。新電力会社が供給する電力と需要は30分単位で一致させねばならない、というもので、もし需給にプラスマイナス3%以上のずれが生じた場合は、電力会社に調整料金を支払う必要がある。逆に、電気を計画通りに使えるようコントロールすれば、電力コストの削減につながる。
NTTコミュニケーションズは竹中工務店と共同で、30分同時同量ルールに従って計画通りに電力を消費できるよう支援する「ビルエネルギーマネジメント実験」に取り組んでいるという。
この実験では、ビルとNTTコミュニケーションズのクラウド「Cloudn)」とをVPNでダイレクトに結び、M2M用のプロトコル「MQ Telemetry Transport(MQTT)」を用いて、ビル側に設置した約5000個のセンサーからデータを1分おきに収集する。データは使い道に応じてKVSであるCassandraやFIAP、あるいはExcelなどに蓄積されるようになっている。そして、Cassandraに蓄積したデータを基に、消費電力計画と実績の差をリアルタイムに解析し、その差が3%を超えそうになるとアラートを飛ばす仕組みだ。あとはそのアラートに従って、照明や空調をコントロールすればよい。
「将来はこの仕組みを自動化し、電力の調達コストを最小化できる『賢いビル』の実現に取り組むほか、ビル以外のいろいろなインフラの監視制御にも活用したい」と境野氏は述べた。
(次ページ、発電力に応じて消費量をコントロールするデマンドレスポンス)
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