節約派の味方である日本ヒューレット・パッカードのオールフラッシュアレイ「HP 3PAR StoreServ 7450」がまたやった! アップデートにより、最大の課題であったフラッシュのコストの問題を技術でカバー。ますます導入しやすくなった製品の魅力をHPのあの2人に聞いた。(インタビュアー TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)
安くなったといってもやっぱりフラッシュ高いよね
IT業界の動向を日々追い続けるTECH.ASCII.jpのオオタニだが、ひょんなことから2ヶ月前、HPのオールフラッシュアレイ「HP 3PAR StoreServ 7450」について記事を書いた。
執筆のきっかけは業界的に注目されているオールフラッシュアレイについての懸念だ。記事では、確かに性能面では素晴らしい効果を得られるだろうが、利用用途は限られ、そもそも高価だと書いた。また、性能面を追求するがあまり、エンタープライズの信頼性に欠けている製品も多く、まさに「帯に短し、たすきに長し」というのが現状だと指摘した。
これに対してのHPの回答となったのが、前回の記事だ。詳しくは記事を読んでもらいたいが、HP 3PARの場合、もともとの製品設計自体がディスクにデータをなるべく書き込まない“節約アプローチ”を採用している。SSDに特化したHP 3PAR StoreServ 7450はこのアプローチをさらに追求し、SSDの長寿命化と性能を満たしつつ、高いコストパフォーマンスを実現。性能面だけではなく、エンタープライズの信頼性も満たしているのがポイントだ。また、なかなかお目にかかれなかったユーザー事例も一部のデータベースアプリケーションやVDI(Virtual Desktop Infrastracture)のみならず、大量のWebアクセスを吸収する用途に用いられているとのこと。日本での導入も進んでいる状況だ。
しかし、オールフラッシュアレイ導入への課題は残っている。ずばり価格だ。いくら下落したといっても、絶対的な価格ではフラッシュはまだまだ高価。しかも、秋葉原などで出回っているコンシューマー向けのSSDに比べれば、エンタープライズ向けのSSDは桁違いに高い。信頼性の確保や歩留まりを考えれば致し方がないが、導入の障壁になっているのは間違いない。正直まだまだ「高嶺の花」なのだ。
そんな疑問を感じていたオオタニに、またまた日本HPからお声がかかった。なにやら、最新のHP 3PAR StoreServ 7450(以下、3PAR 7450)ではアップデートが施され、かなりリーズナブルな価格が実現されるとのこと。さっそく、大島にあるHPオフィスに行ってきた。
大手ベンダーとして初めて安価なcMLCドライブを採用
HPによると、3PAR 7450でリーズナブルな価格が実現できるのは、大容量フラッシュを市場投入するのに加え、書き込みデータを大幅に削減することで、フラッシュの利用効率を向上させたからだという。これにより、eMLCドライブのオールフラッシュアレイに比べ、GB単価を約1/6にまで圧縮している。もちろん、これには確固たる根拠があるので、以下説明していこう。
まず、最新の3PAR 7450ではエンタープライズ向けのeMLC(Multi Level Cell)ドライブではなく、コンシューマー向けのcMLCドライブを用いることで、GB単価を約60%にまで落とすことが可能になった。容量面でも最大460TBまで搭載可能になったほか、1万5000回転のHDDに比べて、約7倍の電力効率を実現した。
ご存じの通り、エンタープライズ向けのフラッシュは書き込み耐性や信頼性を優先し、当初はSLC(Single Level Cell)対応のSSDドライブを採用していたが、その後MLCのSSDドライブに移行している。そして今回、3PAR 7450では他社に先駆けてcMLCドライブを採用し、さらに高いコストパフォーマンスを実現したわけだ。出荷が今秋の予定なのでやや先になるが、日本ヒューレット・パッカード HPストレージ事業統括本部 ストレージマーケティング本部の加藤茂樹氏は「スタートアップではcMLCを採用しているベンダーもいるが、大手ベンダーとしては初めての採用。これで、cMLCドライブの採用により、コストを大幅に下げることが可能になった」と語る。
当然ながら、コンシューマ向けのSSDで性能や信頼性は大丈夫かという不安があるだろう。これに対して、加藤氏は「正直、性能面はeMLCドライブに比べ、cMLCドライブの方が若干劣ります。しかし、HP 3PARのソフトウェアにより、信頼性はきちんと確保し、コストと両立できました。エンタープライズの環境でも長くご利用いただけます」と語る。
前回の記事で解説したとおり、3PAR 7450では書き込みデータを少なくすべく、さまざまなテクノロジーを用意している。3PAR 7450では無駄なゼロブロックを検出したり、各SSDへの書き込みを均一化するワイドストライピングの機能が用意されている。また、データ待避用として取っておいたスペア領域を、データの書き込み用に開放するアダプティブスペアリングという機能を搭載している。SSDへの書き込みをなるべく抑え、特定のセルに負荷が集中しないようにしているわけだ。SSDの寿命を伸ばすこれらの機能が信頼性を担保するからこそ、安価なcMLCドライブが採用できたわけだ。
シンデデュープでいよいよHDD並のコストへ
これらSSDの長寿命化機能は、そのまま利用効率の向上にも効いてくる。限られた容量のSSDを有効活用すれば、当然ながらGB単価に跳ね返る。実際、cMLCドライブでシンプロビジョニングを使うことでeMLCに比べて38%、アダプティブスペアリングにより31%まで下げることができるという。
そして、今回のアップデートでは、さらに「シンデデュープ」という高速な重複排除機能が追加された。具体的には重複排除で必要なデータのハッシュ生成を3PAR 7450に搭載されたASICで行なえる。日本ヒューレット・パッカード プリセールス統括本部 ストレージ技術本部 ストレージ技術一部 シニアITスペシャリスト 岩野義人氏は「既存のASICのXORのパリティ演算機能を重複排除のハッシュ生成に流用しています。また、特許技術による高速インデックス技術を組み合わせることで、書き込みデータに対してリアルタイムに重複排除を行なえます」と説明する。
これにより、eMLCドライブ比べて15%というGB単価を実現。大人の事情で具体的な金額は書けないが、いよいよ1万5000回転のHDDと肩を並べる価格になったという。
ここまでコストがここまで下がるとなにが起こるか? 「高価なフラッシュにアクセス頻度の高いデータを集め、それ以外はHDDにストアするという階層化管理の概念がなくなります。アーカイブ用途以外は適用範囲が大幅に拡がるはず」(加藤氏)とのことで、従来と異なる適用領域にオールフラッシュアレイが進出する。そして、オンラインでのデータマイグレーションを実現するHP 3PARならではのフェデレーションの機能も活きてくるという。岩野氏は、「高い負荷をプライマリのオールフラッシュに移動させたり、HDDのアーカイブさせることがシステム間で意識せずに実現できます」と語る。
加藤氏は「コストが下がれば、オールフラッシュアレイが売れないはずがない。この5年間でフラッシュが一気に台頭してくるはず」と期待する。オールフラッシュアレイの唯一のネックだった価格という問題を技術で乗り越えたHP 3PAR。性能重視のユーザーをターゲットとして、今後ブレイク必須といえるだろう。
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(提供:日本ヒューレット・パッカード)