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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第136回

Nuvibeの製品開発者に聞く

伝説のエフェクター「Uni-Vibe」復刻版の回路は一晩で書かれた

2014年05月31日 12時00分更新

文● 四本淑三

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モスクワ放送からUni-Vibeの発想は生まれた

―― あのUni-Vibeの設計者が三枝さんだったという話を知ったときには驚きました。

Image from Amazon.co.jp
ディレクターズカット ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間 [DVD]

三枝 私もずっと忘れてましたから。ジミヘンが使ったという話も(ウッドストック※3の開催後)10年くらい経ってから知ったんですよ。もちろん作ったのは覚えてましたけどね。ウッドストックの映画を観て、ああこれはそうだなと思いましたし。

 ―― 当時もワウやファズはあったと思うんですが、フェイズ・シフターは製品としてまだなかったんじゃないですか?

三枝 私もよく覚えていません。そもそも、あの頃はエフェクターという言葉が、まだなかったと思うんですよ。どっちかというと私は計測器マニアなんですよね。計測器を自分で作るのも面白かった。あとは、後になってシンセサイザーのもとになる発振器とか、そんなこともやっている中でのエフェクターでしたね。

―― この位相を揺らすという発想はどこから来ているんですか?

三枝 単純なんですよ。モスクワ放送※4を聞いていてね、「フェーディング※5」ですね。位相のフェイジングじゃなくて「フェード」です。

―― 「こちらはモスクワ放送です」っていうアレですね(タモリの真似をしながら)。

三枝 ええ、音楽がああいう風に変わるというのは面白くて。いろいろ実験しました。一番最初はコイルでやったかな。

―― コイル?

三枝 昔は遅延装置やメモリーなんてなかったですから、信号を遅らせるためにコイルをたくさんつないだんです。信号の位相を少しずつずらしながら、ディレイを作る方法があるんですけど、そんなことでいろいろ遊んでいたんですね。それで、ああいった感じの音を作りたかった。

―― ではアイディアは以前からお持ちだったと。

三枝 そうですね。

※3 「ウッドストック・フェスティバル」
1969年8月15日から3日間に渡って、ニューヨーク州サリバン郡ベセルホワイトレイクの農場で40万人とも言われる観客を集めて開催された。ジミ・ヘンドリクスはその最終日のトリとして登場し、歴史的名演となる「The Star-Spangled Banner」をUni-Vibeを使って演奏。主な出演者はマウンテン、グレイトフル・デッド、CCR、ジャニス・ジョプリン、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ザ・フー、ジェファーソン・エアプレイン、テン・イヤーズ・アフター、ザ・バンド、CS&Nなど。その模様を記録した映画に「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」がある。

※4 ソビエト連邦時代の国外向け放送。日本語放送も夜間に中波で放送され、日本全国で聞くことができた。

※5 位相の違う波が合成され周期的に強弱を繰り返す現象。両手で口をふさいで開け閉めしながら、この現象をシミュレートする芸「タモリの北京放送」でも知られる

(次ページでは、「この時代でもCdSに替わる素子がない」)

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