日本IBMは4月9日、マネージド型のプライベートクラウドサービス「IBM Cloud Managed Service(CMS)」において、利用モデルのラインアップを拡大した。システムやデータを社外に出せない/出したくないという顧客向けに、顧客のデータセンター内に設置したIBMリソースを使う形態でもマネージドサービスを提供する。
IBM CMS(旧称:IBM SmarterCloud Enterprise+)は、IBMがシステムの監視やバックアップなどの運用作業も含めたマネージド型で提供するプライベートクラウドサービス。これまでは、IBMデータセンター内に設置されたIBM保有のリソースを使うサービス提供モデルだったが、今回新たに「リモートPoD」と呼ばれる利用モデルを追加し、顧客サイト内に設置したIBMリソース(Pure Flex)をIBMがリモート運用する形でも提供する。
これにより、セキュリティの観点から自社内での保持を望む顧客や、自社データセンターのスペースを有効活用したいという顧客に対し、マネージド型でのプライベートクラウドサービスを提供できる。
またCMSについては、従来の提供モデルも含め、一部機能で若干の値下げを行ったほか、メモリ/CPUの追加オプションの提供、SLA付き仮想マシンのサービスレベル向上などを行っている。また、今後の予定として、DR(災害対応)オプションの増強や、データセンター拠点国の拡充(中国、ポルトガル)なども発表している。
なお、CMSの提供価格は個別見積もりとなっているが、「提供モデルによるサービス自体の価格の違いはない」(IBM)ため、顧客サイトで運用する場合は設置スペースや使用電力のコストが余分にかかる。
そのほか、SAPアプリケーションを用いた業務システムをPaaSで提供する「IBM CMS for SAP Applications(CMS4SAP)」においては機能強化を図り、標準機能として「SAP HANA」プラットフォームを提供する。顧客が購入済みのHANAアプライアンスをIBMサイトで運用することも可能。
発表会に出席した日本IBM 執行役員 クラウド事業統括の小池裕幸氏は、クラウドビジネスの現況について語った。なお、日本IBMでは今年4月、事業部名を「スマーター・クラウド事業統括」から「クラウド事業統括」に改めている。
小池氏は、一部ベンダーがマネージドクラウドサービスと称して提供する「人が張り付く」形態のサービスはクラウドと呼べるのだろうか、と疑問を呈し、CMSの新しい提供モデルではあくまで「運用はIBM側から、リモートで、自動で行う」と説明した。
また小池氏は、パブリッククラウドサービス「IBM SoftLayer」のビジネスが好調で、SIやISVのパートナーエコシステムは「日本でもすでに3桁」に到達したと述べた。また、スタートアップ企業にSoftLayerクラウドを無償提供する「SoftLayer カタリスト・スタートアップ・プログラム」を、今後日本でも本格的にアピールしていくとしている。
IBMのクラウドビジネス拡大に向けたクラウドシフト施策については、前述の組織名称変更のほか、国内のクラウド・エキスパート拡充が予定よりも早く進んでおり、800名に到達したことを明らかにした。今後、クラウドを活用した新ビジネス創出や業務プロセス変革を支援する「クラウド・アドバイザリ・サービス」、顧客の業界に特化したソリューション構築や既存環境のモダナイゼーション支援を行う「クラウド・イノベーション・サービス」も提供していく。