12月9日、クラウド型のビッグデータサービスを手がけるトレジャーデータは、ビジネスのアップデートのほか、新サービス・新価格プランについて説明する発表会を開催した。アドホックデータ解析向けの新エンジンが投入されたほか、初めて可視化ツールが標準で提供される。
1兆件から2兆件までは2ヶ月で達成
発表会では、米トレジャーデータ CTOの太田一樹氏が会社とサービスの紹介を行なった。ビッグデータの収集・保存・解析を一手に行なえる「Treasure Data Service」を提供するトレジャーデータは、2011年12月に米国で創業されたベンチャー。「他社と異なって、数日で開始できるのがもっとも大きい」と太田氏が語るとおり、「すぐに使い始められる」「クラウドサービスとして提供」「シンプルな機能セット、手厚いサポート」といったオールインワンのコンセプトを持っている。
同社が設立されてちょうど2年が経ったが、12月時点での顧客数は100社を超え、四半期ごとのアカウント数も50%以上の伸びと好調にビジネスを伸ばしているという。現在、4000台のサーバーからリアルタイムに収集し、1秒間に15万件のレコードが保存されているとのこと。レコード数も11月には2兆件に達し、「われわれも驚いているが、データ量は指数関数的に延びている。最初の1兆件まで1年かかったが、次の1兆件はたったの2ヶ月で達成した」(太田氏)とのことで、まさにビッグデータが現実に存在し、ビジネスとして成立するようになっている。
では、なぜトレジャーデータが選ばれるのか? これはやはり収集・保存・解析まで単一のサービスでの提供を行なえるという点に尽きるようだ。既存のデータウェアハウスでは解析まで多くの時間とコストがかかるが、トレジャーデータの場合、2~3週間でスタートし、データ解析という本質的な作業に集中できる。しかも月額課金制の支払いが可能で、既存のBIとレポーティングツールが使える点も大きいという。
トレジャーデータの場合、非構造データやM2Mのデータを解析し、マーケティングやレポーテイングに活かすというのが典型的な利用パターン。現時点でもクラウド型のビッグデータサービスという同社の立ち位置はユニークで、オンプレミス型の構造化データソースとはむしろ補完関係にあり、両者を組み合わせる利用例も多いという。
アドホック解析エンジンや可視化ツールなどを発表
今回、追加されたのはアドホック解析に最適な「Treasure Query Accelerator」だ。同社の「Plazma」のクラウドストレージに対して複数のエンジンで並列クエリをかけることで、既存のバッチ型クエリと比較し、10~50倍高速なレスポンスを得ることができる。同社の顧客の強い要望を受けて開発したもので、定時レポーティングに最適化したバッチ型クエリに対し、リクエストに応じてアドホック解析するのに向いているとのこと。「アドホックデータ解析では、大量のデータをクイックにドリルダウンしながら解析できる。ミーティングの中で、過去のデータを参照しながら、バスケット分析できる」(太田氏)。
もう1つは大量のデータからドラッグ&ドロップでデータ可視化が行なえる「Treasure Viewer」だ。Treasure Query Acceleratorを利用した簡易な可視化ツールという位置づけで、「SQLを書けない人のもの。Excelのピボットテーブルのようにデータを可視化できる」(太田氏)といった特徴を持つという。より高度なBI機能が求められる場合、パートナーのBIツールを推奨するという。
新価格プランも発表された。従来のFreeプラン、Standardプランに加え、Premiumプランが追加された。7500ドル/月のPremiumプランでは年間で500億件のレコード数に対応するほか、20ユーザーまで対応。専任サポートが付くという手厚いサービスで、緊急時の対応も可能になっている。
さらに特定のソリューションに特化したソリューションテンプレートも提供する。「業界ごとにやっていることがとても似ている。2~3週間いただければ、業界に最適なパッケージを用意する」(太田氏)とのことで、「デジタル広告レポート&解析」「クリックストリームパス解析」「オンラインゲーム行動解析」「マーケティングブランド解析」などのエージェントやダッシュボードの設定を事前に定義して、提供するという。
グリーや良品計画も導入
太田氏に引き続いて日本の状況について説明したトレジャーデータ ジェネラルマネージャーの堀内健后氏は、2012年11月の日本法人設立以来、すでに40社の顧客企業を得ていると説明した。
導入企業としては、クライアント向けのアトリビューション解析を提供する博報堂DIYやWebの検索やアプリケーションログの解析に利用しているクックパッドのほか、ゲームごとのKPIモニタリングを行なうグリー、さらにWeb・アプリケーションログ解析に利用する良品計画などの顧客が新たに披露された。今後はWeb関連サービスへの浸透をより強化するほか、センサーなどの活用を模索する日本の製造業の領域にも挑戦していくという。