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スタートアップを凌駕する2000社の顧客を獲得した理由

ハイブリッドアレイの完成形?Nimble Storageのメカニズム

2013年11月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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米Nimble Storageはフラッシュとハードディスクの特徴を活かしたハイブリッドストレージを提供するベンダーだ。自社開発のファイルシステムを用いることで、他社より少ないハードウェアで、同等の性能とキャパシティを実現するという。国内ではアセンテックが取り扱う。

なぜイチからファイルシステムを作り直したのか?

 Nimble Storageは2008年、EMCやデータドメイン、ネットアップのメンバーから設立されたベンダー。10~15年先のストレージのアーキテクチャーを変える外部要因から影響を受ける形で設立されたという。

Nimble Storage CEO スレシュ・バスデバン氏

 設立に至るもっとも大きな外部要因は、フラッシュの台頭だったという。Nimble Storage CEOのスレシュ・バスデバン氏は、「フラッシュはランダムI/Oの面でとても高いパフォーマンスを実現するし、ハードディスクはキャパシティ(容量)の点で優れている。このフラッシュとハードディスクをお互いに補完しながら、メディアの特性を活かすためにはシステムがイチから開発する必要がある」と述べる。こうしてNimble Storageが開発した「CASL」と呼ばれるファイルシステムでは、フラッシュとハードディスクの特徴を熟知したものになっているという。

 そもそもファイルシステムとはアプリケーションのデータを分割し、HDDやフラッシュなどのメディアに対して適切にマッピングする機構だ。そしてアプリケーションからデータを読み出す際に、どこにどのようなデータを保存したのかをマッピングしたメタデータが必要になる。これらのファイルシステムの上に、ソフトウェアレイヤーが作られ、スナップショットやクローニング、レプリケーションなどの機能が追加される。しかし、各ソフトウェアはファイルシステムに依存しているため、ファイルシステムを変える場合は、ソフトウェアを書き直さなければならない。

 なぜわざわざファイルシステム自体をイチから書き直したのか? もとよりフラッシュが存在しないときは、増大するI/O負荷を吸収するには、ディスクドライブを追加する方法しかなかった。これが性能とキャパシティのミスマッチを生んできたのは説明するまでもないだろう。しかし、SSDが登場して以降、多くのストレージではホットデータをフラッシュに格納し、コールドデータをハードディスクに移動するアプローチをとっている。

Nimble StorageではフラッシュとHDDのメリットをいいとこ取りしたハイブリッドアレイを実現

 ハスデバン氏によると、このアプローチであればパフォーマンスが向上するが、2つのペナルティがあるという。「データをフラッシュに書き込むほど磨耗しやすくなる。とはいえ、磨耗しないようにすると、高価で耐久性の高いフラッシュを使わなければならない。また、フラッシュでデータ保護をしようと思うと、RAIDを使わざるを得ない。RAIDを使うと、オーバーヘッドになり、ディスクの無駄も出てしまう」というのがハスデバン氏の論だ。

 もう1つのペナルティは、データの移動に関わるペナルティである。「理想的にはホットなブロックだけを細かい単位で移動させたほうがよいが、ほとんどの製品はギガバイト、あるいはメガバイトの大きな単位でデータを移動してしまう」(ハスデバン氏)。このように移動の単位が大きいと、ホットな部分以外はフラッシュの中で無駄なスペースとして利用されてしまう。また、ほとんどの製品では1時間に1回程度しかデータ移動しないため、レスポンス面で課題がある。

フラッシュはリードキャッシュとメタデータ保存に特化

 こうした性能とキャパシティのアンバランスさを解消し、安価なフラッシュを効率的に利用すべく、Nimble Storageは、複数のランダムI/Oがシステムに入って来た場合、それぞれのブロックをメモリ上で、しかもインラインで圧縮。さらに複数のランダムI/OをシーケンシャルI/Oにまとめた上で、ハードディスクの方に書き込むという方法をとる。「フラッシュを導入していないのに、ハードディスクがフラッシュのようにふるまい、多くのランダムI/Oを吸収する」(ハスデバン氏)という。

データをインラインで圧縮し、シーケンシャルI/Oとして書き込む

 一方で、フラッシュはメタデータの保存と、リードキャッシュとしてのみ利用される。リードキャッシュなので、フラッシュ自体の容量は大幅に減らすことができる。「データは圧縮されているし、キャッシュなので、RAIDで保護する必要もない」(ハスデバン氏)とのことで、前述したRAIDのオーバーヘッドを排除することが可能だ。書き込みの際もランダムI/Oではなく、シーケンシャルI/Oとして書き込むため、エンタープライズ向けフラッシュより耐久性の低いコンシューマー系のフラッシュを利用できるという。

安価なMLCフラッシュをリードのみ利用する

サポートの90%はNimbleからの事前通知

 Nimble Storageは大きく3つのメリットが提供できるという。1つめはもちろんシステムの要求するスペックに対して、少ないリソースで済むという点だ。他社と同じ性能とキャパシティを、より安価なディスク、少ないフラッシュで実現。「アプリケーションが要求するI/Oとキャパシティに対して、競合ベンダーの製品でSSDやHDDを組み合わせた場合に比べて、1/3~1/5に削減することができる」(バスデバン氏)。これにより、ストレージに対する設備投資を削減できるだけではなく、データセンターの電力や冷却などの運用コストも削減できる。

 データ保護のためのシステムが1つで済むというメリットもある。従来はプライマリシステムがあり、そこのデータをコピーするバックアップシステムがあり、それらをコピーした遠隔のDRシステムが存在していた。これに対しては、Data Domainのようなベンダーが重複排除や圧縮を用いたディスクバックアップ製品を提供してきたが、ネットワーク経由のバックアップなので、1日何度も行なうのは難しかった。その点、Nimble Storageはストレージアレイ自体が高速で、同一筐体に複数のスナップショットを保存できるという。

スナップショットとレプリケーションでバックアップを統合

 3つめはシンプルな導入と管理だ。従来は企業がオンプレミスでストレージを導入し、それぞれユーザー自身が管理するのが普通。なにかあった際にベンダーに答えを出してもらうパターンだった。しかし、バスデバン氏はこうしたストレージ管理はすでに時代錯誤だと主張する。「データセンターやクラウドに接続されているストレージをお客様が自ら管理するのは理にかなっていない。そのため、ストレージ管理のやり方をもう1回考え直す必要があると思った」(バスデバン氏)。こちらの課題に対するクラウドベースの管理システムが同社の「InfoSight」だ。

 たとえば、セットアップに関しては他社製品では1~2日かかるが、Nimble Storageでは1時間かからず稼働できるという。また、運用管理に関しても、クラウドと連携。Nimble Storageがセンサーで収集した稼働状態や性能情報を数分おきにサポートセンターに送信。これらをデータベースに格納して、エンジニアが解析と予測を行なっているという。「サポートのうち90%はNimbleからお客様に不具合の予兆やオペレーションの改善を通知したものだ。しかも、そのうち75%は対応を記載したEメールだけで解決している」(バスデバン氏)。

クラウド上で提供されるNimble Storageの管理ソフトウェア

 リモート診断や性能の管理が可能なので、オペレーションは劇的に改善する。当然、オンプレミスでソフトウェアをインストールする必要はなく、ポータルサイトにアクセスすれば、性能や稼働状態などをチェックすることができる。

スタートアップとは異なる2000社の顧客規模

 製品は性能と容量によって複数のモデルが用意されている。これらはコントローラーやディスクシェルフを追加し、中断することなく、性能やキャパシティをアップデートすることが可能だ。さらに複数台にまとめてクラスター化することも可能だ。

性能とキャパシティを強化できるNimble Storage

 競合は、スタートアップではなく、大手ベンダーになるという。「2008年、同じようなフラッシュストレージのスタートアップは24社くらいいたが、現在になっても、顧客ベースは300~350件程度だろう。弊社は2000件にまで伸びており、特にここ1年は350件も増えている。急速に市場に受け入れられている」(バスデバン氏)とのこと。案件ではスタートアップより、EMC VNX、NetApp FAS、Dell Comperent/EqualLogicなどの大手ベンダーの製品が競合になるという。「やはり80%は性能とキャパシティで評価されている。リピーターも多く、管理とサポートがシンプルな点が挙げられている」(バスデバン氏)とのことだ。

 日本では、VDIの導入で高い実績を誇るアセンテックが販売代理店となることが先日発表されている。日本市場ではアセンテックをはじめとしたリセラーやテクノロジーパトーナーと密接に協業し、特に電力コストを削減するというニーズに応えていくとのことだ。

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