Smart Airが実現するアプリケーションとの連携
「Smart Air」に関しては、従来のWi-Fi環境はあくまで低いレイヤーのみを管理していたため、さまざまな限界が生じていたと指摘する。せっかく公衆無線LANがあっても、「ビデオは使うな、大きいファイルのダウンロードは控えろなど、ユーザーに不便を強いてきた」(ドミニク氏)。これに対しては単に高速な無線LANの導入するだけではなく、レイヤー4~7でのトラフィックの可視化が必要になるという。
これに対し、アルバ製品では、アプリケーションごとに利用している帯域をリアルタイムに表示できる。しかも、アプリケーションのみならず、デバイス、ロケーション、ユーザーを識別し、これらをセッションとして関連づけた「コンテキスト」によって、柔軟なトラフィック管理が行なえる。「Aruba OSは数千万のコンテキストを識別し、コントロールできるよう設計されている」(ドミニク氏)とのことで、スケーラビリティに関しても抜かりはない。これにより、UC(Unified Communication)アプリケーションの最適な配信、ユーザーに最適化されたアプリケーションネットワーク、さらに顧客エンゲージメントの向上などを管理者の手を煩わせることなく、実現できるという。
UCアプリケーションの最適化という点で、ドミニク氏が披露したのがMicrosoft Lyncの事例だ。アルバは、マイクロソフトはUC分野での提携を進めており、Microsoft LyncとAPIレベルで緊密に連携する。具体的にはコントローラーがLyncサーバーと同期し、音声やビデオのアプリケーションの利用に際して、最適な帯域と遅延を抑えたネットワークを提供する。アプリケーションを識別し、トラフィックの可視化・診断情報をLync側に渡すことで、こうした最適化が実現している。現在は個別にアプリケーションと連携しているが、今後はSDNのコントロールプレーンがAPI経由でアプリケーションにコンテキストを提供していくことになる見込みだ。
売り上げ拡大や顧客満足度向上など攻めるワイヤレスへ
新しいチャレンジとしては、無線LAN環境における位置情報サービスが挙げられる。ドミニク氏によると、従来、無線LANはコストのかかるインフラに過ぎなかったが、収益や顧客満足度を上げるための道具になり得るという。これはおもにホテルやカジノ、カフェ、病院、小売り、交通、スポーツ施設など、「Public Faces Enterprise」と呼ばれるセグメントで起こる。「世界の8割の人が携帯電話を所有し、多くの企業がロケーションをベースとしたマーケティングに関心を持っている」(ドミニク氏)という現状から考えると、無線LANをより売り上げ増大に活用していこうと考えるのも不思議ではない。
こうしたニーズに対応し、無線LANにおいて位置情報サービスを提供する「Aruba Analystic&Location Engine」だ。エンジンで提供される位置情報を元に、たとえばディスカウント情報や特別サービスをスマートフォンにポップアップしたり、患者に対して処方箋や薬の受け取りを通知することが可能になる。
注意すべきはパブリックのセグメントでは、既存の無線LANとはポリシーが大きく異なっているという。ドミニク氏は、「伝統的なエンタープライズでは、ゲストの利用は限定的で、しかも保護の対象ではなかった。しかし、パブリックの分野では、ゲストはお金を払ってくれている顧客だ。当然、利便性を提供すべきだし、保護すべき対象になる」と語る。
もう1つのチャレンジが、マネージドの無線LAN環境を提供する「Cloud Wi-Fi」だ。4つめの目的となる「Simple Air」を実現するCloud Wi-Fiでは、顧客宅にある無線LAN APの運用管理をサービスプロバイダーやSIerから行なえるというもの。特に運用負荷に手間を感じているスモールビジネスのユーザーに向けて、メリットのあるサービスとなる。
最後、ドミニク氏は他社との差別化に関して言及。競合ベンダーは、設定や管理、ポリシーが画一的な「ポートセントリック」で、統合的な管理のためにスイッチをアップグレードしなければならないと指摘。これに対してアルバはワイヤレス、アクセス管理、アプリケーションなどをユーザーに最適化した「モビリティセントリック」なアプローチを実現できるとアピールした。