NTT Comが描くクラウドとグローバルITの現実解 第3回
クラウドはグローバルITの課題解決の鍵となる
グローバルITはなぜ失敗するのか?IDC Japanの識者が語る
2013年10月30日 06時00分更新
グローバルITの課題を解決するクラウド
こうしたグローバルITの課題を解決する1つの選択肢がクラウドだ。寄藤氏は、まず国内のパブリック/プライベートクラウド市場が年率30%という急激な拡大を遂げていることを紹介した。「みなさんの周りでも年率30%以上の成長を遂げる製品やサービスはそれほどないはず」(寄藤氏)。
こうしたクラウド市場の急激な成長は、あらゆるビジネスに大きなインパクトをもたらす。寄藤氏は、「今までクラウドを使ったことない企業が、これからどんどんクラウドを使うということ。みなさんの競合がクラウドを使ってビジネスを変えようとしている」と指摘する。特に米国では本格的なクラウドの普及期に入っており、企業の競争力の源泉となっている。「海外の同僚とは、5年後はクラウドの市場調査がなくなるくらい、当たり前の存在になるかもしれないと話している」(寄藤氏)。クラウドの利用も基幹システムが増えており、適用範囲を拡大している。
寄藤氏は、企業がクラウドを導入する理由を、コストやスピードなど従来のメリットとは異なった観点で捉える。プライベートクラウドの利用促進要因について調べたIDC Japanの調査によると、上位に来るのは「コスト削減効果の把握可能」「運用管理の効率化の把握可能」「IT資産に対する投資対効果の把握可能」など、「把握可能」という表現が続く。つまり、今まで見えにくかったITの利用状況やコストなどをきちんと確認できるところに、企業は大きな魅力を感じているわけだ。「ちょっと前までクラウドのメリットはコスト削減一辺倒だったが、使ってみると、IT上で今何が起きているか、把握し、ガバナンスを効かせられることがわかった。この本質的なクラウドのメリットに気がついた企業が増えている」と寄藤氏は指摘する。
実はこの把握可能という部分に、グローバルITと密接につながるポイントがあるという。数多くの「やれない理由」に対して、クラウドが有効な回答になるのだ。寄藤氏は「業務プロセス変更への抵抗」と「効果が不明確」という根本的な「やれない理由」にクラウドの特性を活かすことができると説明する。「クラウドはアプリケーションとインフラが分離している。まずは業務プロセスに影響を与えないようアプリケーションを温存し、インフラの方だけ変えることも可能だ」と述べる。また、迅速に拡大・縮小できるという特性を活かし、情報システム部内でできるところから始められる。そして、効果が見えた段階で、本格展開をすればよい。ただ、「本質的にはグローバルITの実現は情報システム部内での取り組みではなく、経営の課題だ」と釘を刺す。
集約の方法やあり方は企業によって異なる。一足飛びで日本とアジアを集約するところ、しないところ、自由度を残すところ、本社のガバナンスを厳しくするところなど、さまざまだ。これはユーザーによって異なってよい。しかし、「みなさんの競合はITをうまく使って、ビジネスの標準化や最適化をグローバル規模で始めている。こうした競合を慣れない市場で戦わなければならない」(寄藤氏)という部分は忘れてはならないという。
その上で、今後はIT部門自身がクラウドを積極的に活用し、グローバルのガバナンスを強化し、競争力を発揮する推進役になるべきと提言した。寄藤氏は、「ビジネスにあわせてITを作るのではなく、むしろ自ら企業の在り方、経営の在り方などを提案する変革部門としての役割を担っていく必要がある」と、聴衆を鼓舞し、講演を終えた。
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