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PCオーディオでアイドルを聴く人がいるから、高音質を届けたい

オーディオメーカーと音楽制作者が考える、本物のいい音とは (3/7)

2013年10月01日 15時00分更新

文● 編集部、外村克也(タトラエディット) 写真●今井宏昭

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最終的に作る楽曲をイメージしてから音を録音する

小島 制作の仕上げに近い段階では、どんな環境で聴いているんですか?

松隈さんは以前、バンドとして活躍していたようだが……

松隈 MP3にして聴くという人も最近いるんですけど、僕はそこまではやらないです。ビクターのマスタリングスタジオにある、ウッドコーンのスピーカーで最終的に確認します。普段のミックス用のモニタースピーカーより少し大きめのものを使っています。

小島 昔はたいていラージモニターがありましたよね。今は大きいスピーカーはないんですか?

松隈 マスタリングスタジオでもあまり使わないですね。本当はラージモニターで調整したいですよ。でもマスタリングエンジニアの人も悩んでいて。僕らやプロデュサーがラージモニターで調整しても、最終的にはMP3などでのバランス感に変えられてしまうので。最近はMP3専用でマスタリングする人もいますね。MP3も結構違うみたいですけど。

小島 BiSでは「ハイレゾ」のデータも売っていますよね。実際のCDより先行してリリースされていますが、オーディオ的なよさをある程度わかっている人向けのものなんですか?

松隈 そうです。あそこに来る人は、音に対するこだわりがあるアーティスティックな人ですよね。

小島 たとえば24bit/44.1kHzの曲だと、環境によっては再生できないじゃないですか。あえてやるってことは、携帯プレーヤーだけじゃないターゲットも考えていると。

松隈 おそらくPCの外部に出して、DACを挟んで聴くような感じです。そうでないとあまり意味がないですからね。

小島 少し前であればアーティストとエンジニアは仕事がはっきりと分かれていて、お互い踏み込まない領域もあったかと思います。今はアーティストもエンジニアリングの大部分をやれるわけじゃないですか。仕事の役割が変わったことで、意識の変化があったりするものなのでしょうか?

松隈 僕の場合は、アマチュアでやっている頃からMTRでバンドの音を録ってデモテープを作るのが好きだったんですよ。もともとはレコーディングエンジニアになりたかったので。デビューする前に東京のレコーディングスタジオまで行ったこともありました。ただバンドが盛り上がって、1回自分のバンドでデビューしたんです。そのときに初めてプロのスタジオエンジニアの人や、プロデュサーの人たちにお任せしました。そこで「こうすればこんな音が出るんだ」って勉強させてもらえたし、僕の出したい音を言葉にするとエンジニアに伝わらなかったり……。それなら自分でやったほうが早いなと。

小島 まあ、そうなりますよね(笑)。

松隈 音を作ってから、エンジニア的脳みそになるというよりは、最初からエンジニア的脳みそで音作りしているような感じはありますね。ギターでたとえると、一般的なアーティストはまず好きなギターアンプでつなぎ、自分にとって気持ちのいい音を出すじゃないですか。それをエンジニアが汲み取っていくと思うんです。僕の場合は、ギターアンプで作り込むんじゃなくて、最終的に出したい音にするには、どういう音で録っておけばいいかを考える。そのためにはマイクを見たり、それに応じてアンプをセッティングしたりします。

小島 ある程度、自由度がある状態で収録しておくんですね。

松隈 そうなんです。

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