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広がる世界と日本の「ネット放送」格差

2013年07月23日 07時01分更新

文● 佐藤正生(Masao Sato)/アスキークラウド編集部

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予備校で顕在化した動画配信のニーズ

 テレビ業界で放送と通信の連携が注目されている中、アカマイはこのトレンドをどのように見ているのだろうか?

 新村氏は、「インターネットに乗っていないメディアは、まだたくさんある。インターネットに乗せることで高い付加価値を生むことはこの何年間で経験しています」と語る。

 例えば、予備校の授業のストリーミング配信などは、当初想像していなかったニーズだという。ある予備校では、これまで、1年間のカリキュラムに沿って録画した授業のDVDを教室で上映したり、生徒に配付していたりしたが、膨大な量のDVDの複製作業が発生していた。業務省力化のため、アカマイ以外のベンダーとの協力で生徒向けの動画配信サービスを始めたものの、再生が止まったり、そもそも配信できなかったりと、うまく運用できなかった。

 その際、相談を持ちかけられたアカマイが調べたところ、ある特定の授業の配信にアクセスが集中してサーバーに負荷がかかっていることが分かった。結局、アカマイのサーバー群で負荷分散することで問題は解決。生徒向けの動画配信サービスは成功し、それを見た他の予備校からもアカマイに動画配信サービス構築の相談が来るようになった。

「動画配信」が一般向けサービスとして、しかも「課金」ビジネスとして成立するには、それだけの「信頼性」と「品質の高さ」が求められる。そもそも再生できなければ話にならないし、再生できたとしても遅延が発生したり、画質が許容範囲を超えて悪かったりでは困る。回線状況や、アクセスの集中具合など不確実性が高い中でも、安定した高品質の動画配信を実現するアカマイのようなCDNを利用することで、動画配信の「安定性」「品質の高さ」が担保され、課金に耐えうるサービスの提供が可能になったのだ。

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トラフィックの“見える化”も実現した(画像提供:アカマイ)

動画配信の先駆者BBCから学ぶべき点は多い

 このアカマイの動画配信のノウハウは、他の起業とのパートナーシップにより日々洗練されている。中でもインターネットのテレビ・ラジオ放送視聴サービス「iPlayer」を提供している英国放送協会(BBC)は最大級の顧客であり、多くの知見を得ているという。

 「当社のストリーミングの付帯サービスは、BBCからの要望に応える中で生まれたものも多いです。彼らは常にインターネットサービスを改善するためのアイデアを持ちかけてくる。BBCはインターネットの動画配信の先駆者で、人手もお金も掛けて作った多くの優良なコンテンツを、一人でも多くの視聴者に届けたいという思いがひしひしと伝わってくる。そのツールの一つとしてインターネットを非常に活用しています」(新村氏)。

 実際、BBCは2012年に開催されたロンドン五輪において、全競技のライブストリーミングを実施。この配信についてもアカマイの技術が大きく関わっているという。

 インターネット側ではすでに、アカマイをはじめとしたCDN事業者の取り組みもあり、電波に見劣りしない放送を提供できる環境が整っている。対して日本の放送業界では、インターネットによる配信でマネタイズできるのか、そもそもインターネットで流していいものか、議論は尽きない。そうこうしているうちに、海外の有力メディアの動画配信サービスはさらに向上していく。

 7/24発売のアスキークラウドでは、4Kのネット放送にも対応できるというアカマイ上級副社長のビル・ウィートン氏のインタビューを掲載。そして、なぜ、日本でBBCのようなインターネットの同時再送信サービスが普及しないのか?日本の放送業界が抱える課題に迫る。

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