お茶の間でテレビを囲んで一家団欒、は過去の風景になりつつある。番組は録画してスマートフォンやタブレットなどにダビングし、好きな時間に好きな場所で見る――そんな視聴スタイルに応えた、ハードディスクレコーダーを開発した東芝を取材した。
「この製品を使えば、生活が変わる。テレビ放送をより楽しんで頂くための機械です」。東芝でハードディスクレコーダー「レグザサーバー」の開発を主導した、商品統括部BD商品部の澤岡俊宏参事は語る。
レグザサーバーは、テレビに接続して一週間分のテレビ番組を全て録画する「タイムシフトマシン」機能を搭載した、いわゆる「全録機」。その最新モデル「DBR-M490」が6月20日に発売された。地上波にBS/110度CS放送を加えた最大8チャンネルを丸ごと記録できる。
澤岡氏は、「録り逃しを防ぎたい」視聴者のニーズに応える究極のかたちとして、「予約不要のレコーダー」=全録機(レグザサーバー)を開発したと話す。「当初は『すべて録画するのは無駄ではないか』という声もありましたが、むしろ全番組を録りためることで、テレビの楽しみ方の幅が広がります」(澤岡氏)。
例えば、放送後に人づてやネットなどで「面白かった」と聞いた番組でも、レグザサーバーなら視聴可能だ。具体的な数字は出せないが、販売的にも堅調だと澤岡氏は話す。
ただし、自動でCMをスキップして番組だけを録りためる、という使い方はできない。「放送されたコンテンツの取捨選択は、あくまでお客さまにお任せしています。東芝としても、今後やるつもりはありません」(澤岡氏)。
タイムシフトマシンはあくまで「時間をずらす」機能で、CMスキップなどの編集は加えられないというのが東芝の主張だ。もちろん、特定の番組をハードディスクに保存する場合は、「マジックチャプター」や「おまかせプレイ」といった機能で本編部分のみの再生に対応している。
澤岡氏は、視聴者のテレビ視聴環境の変化を敏感に感じ取っている。「ネット動画やHuluに代表される定額制サービスの台頭で、テレビに割かれる時間が減っている事実はあると思います」(澤岡氏)。
その中で、レグザサーバーはどのような価値を提供できるのか。澤岡氏は、「好きな時に、好きな場所でテレビを楽しむための製品」だと話す。レグザサーバーで録画したコンテンツは、スマートフォン(スマホ)やタブレットにダビングして持ち出せる。「自宅でテレビを見る暇がない」という声に対するひとつの回答だ。
しかし宅外から自宅のレグザサーバーにアクセスして番組を見ることは、現在は「宅外配信になるのでできない」(澤岡氏)。だからこそ「テレビ離れ」が進むのだと指摘する。
「スマホには何でもそろっていますが、テレビ関連の機能では今一歩、というところでしょうか。ハイビジョンが当たり前の今日、ワンセグでは画質面で見劣りしますよね。番組がスマホにも配信できるようになれば、テレビは今よりも見られるようになるはずです」(澤岡氏)。
「好きなときに、好きな場所で、好きな番組を」楽しめるのがテレビの理想的な視聴スタイル。放送にさまざまな制約がある中、視聴者と番組の距離を近づける録画機メーカーの取り組みに注目だ。
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