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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第3回

第11回MMD杯予選スタート間近のMikuMikuDanceタグを数字で解説

3回目はMMD! myrmecoleonのグラフで見るニコニコ動画

2013年06月20日 11時00分更新

文● myrmecoleon

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 この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。第三回は「MikuMikuDance」(MMD)タグを取り上げます。
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筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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この連載がちょっと読みやすくなる用語解説コーナー

■タグ ニコニコ動画で動画に視聴者が自由につけられる短いキーワード。ニコ動で動画を探すさいはこのタグで検索すると便利。
■カテゴリタグ  「ゲーム」「歌ってみた」「VOCALOID」など、タグの中で特別な30個のタグ。公式ランキングが存在するなどいくつかの機能がある。
■マイリスト  ニコニコ動画の一機能。好きな動画を自分のリストに登録できる。このマイリスト登録数は、動画の再生数やコメント数とともによく評価の対象とされる。
■プレミアム会員  ニコニコ動画の有料会員のこと。動画の視聴や投稿、ニコ生の配信等にさまざまな優遇がある。
■中央値  順番に並べてちょうど真ん中になる数値のこと。動画の再生数等は正規分布してないため、平均でなくこちらが実態をよく反映している。

※このほかにも、わかりづらい用語・言い回しがあれば、記事タイトル直下のツイートボタンから気軽にご一報ください!

非常に再生数の高い「MikuMikuDance」タグ

 MikuMikuDance(以下MMD)は、2008年2月に樋口優氏により開発・公開されたフリーの3DCGムービー製作ツールです。多くのユーザーにより3Dモデルやダンスモーション、各種ツールやエフェクトのプラグイン、および互換ソフトなどが公開・配布され、これらを活用して動画が投稿されています。こうしたユーザーによる疑似分業と共有は、ニコニコ動画内でも特にMMDで顕著に現れています。

 「MikuMikuDance」タグのついた動画は現在12万以上。カテゴリタグではありませんがそれに準ずる代表的なタグで、一緒に付くカテゴリタグは使用キャラによってさまざまです。

 タグの動画の特徴としては、再生数やマイリスト登録数、マイリスト登録率の高さが挙げられます。特にマイリスト登録数は中央値が全体の10倍以上で、どのカテゴリタグよりも高いです。再生数の中央値は1622。1万再生以上が9.7%、上位2.2%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中と、比較的人気の偏りが少ないタグです。

「MikuMikuDance」タグの基本データ
合計 中央値 参考:全体の中央値
再生数 5億3509万9900 1622 526
コメント数 2235万260 32 20
マイリスト登録数 1837万5310 33 3
コメント率 - 2.00% 3.54%
マイリスト率 - 2.15% 0.87%
「MikuMikuDance」タグの投稿者データ(公開ユーザーのみ)
プレミアム会員の比率 62.44%
女性の比率 24.75%
国外からの動画投稿者の比率 8.23%
平均年齢 25.9歳

※コメント率・マイリスト率はそれぞれコメント数・マイリスト登録数を再生数で割った値。拙著同人誌『ニコニコ動画統計データハンドブック2013』より抜粋。2012年12月上旬調査時点の値。

 これまでの投稿者の総数は約1万4000名。平均年齢は約26歳。4人に1人が女性、海外からの投稿者も1割弱存在します。またプレミアム会員も6割とどのカテゴリタグよりも高いです。投稿者の増加は年々加速しており、最近は月に5000本の動画と500名弱の投稿者が増えています。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。後述するMMD杯の直後の時期(3月・9月)に注目すると、この時期に毎回新規投稿者が増えている様子が分かる

 興味深い傾向としては再生数中央値の推移があります。再生数は蓄積するため、月ごとの中央値は新しいほど低い傾向がありますが、「MikuMikuDance」タグに関しては毎年2月・8月のみ跳ね上がります。実はMMDのコミュニティでは「MMD杯」という動画投稿イベントが毎年この前後に開催されており、この期間はニコニコ動画内での注目が高く、上位の動画だけでなく、タグ全体の再生数が上がるのです。

月ごとの「MikuMikuDance」タグの動画群の再生数中央値。MMD杯本選開催時の2月・8月はオレンジ。前後の月と比べて再生数の高い傾向が分かる

 MMD杯は純粋にユーザーが企画・運営しているイベントですが、MMD自体の認知の拡大も、過去にMMD杯で投稿された動画やその中で発表された新しいモデル・モーション・技術などによるところが大きく、「MikuMikuDance」タグはMMD杯によって育った、と言っても過言ではないでしょう。

 MMDそれ自体が無償で提供されたことから、コミュニティに対する「貢献」としてモデル・モーション他の共有の文化が生まれ、さらにそれらを含めて評価する場としてMMD杯が機能していることが、「MikuMikuDance」タグが加速・拡大したことの背景にあるのでしょう。

前回のMMD杯の参加作品。これでもまだ一部という膨大なMMDユーザーモデルの数とMMDの歴史を痛感させる動画。ちなみにセンターで踊ってるのはMikuMikuDanceの開発者をモチーフとしたモデルだとか

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