企業ブランドを強調しないフェイスブック
そんなLINEの成功を横目で見ていたのがフェイスブックだ。今年4月、フェイスブックはiOS版Facebookのメッセージ機能にスタンプ機能(英語版は「Sticker」)を追加。モバイル向けチャットアプリ「Facebook メッセンジャー」でも利用可能になった。
現在提供しているスタンプはすべて無料だが、LINEのような収益化は視野に入れているのだろうか。
フェイスブック広報の日高久美子氏に疑問をぶつけたところ、意外な答えが返ってきた。将来のマネタイズ化については明言を避けたが、「スタンプのキャラクターを売り出すことはありえません」(日高氏)という。
これには、フェイスブックという企業のスタンスが大きく関わっている。フェイスブックはインフラに徹しているため、「Facebook」という企業名やブランドを強調した戦略は採らないという。実際に、フェイスブックの米国本社にも、日本のオフィスにも「Facebook」のロゴは見当たらない。
「フェイスブックは椅子みたいなものです。椅子は利便性が高く毎日使うものですが、座った時にいちいちメーカーを意識しませんよね。フェイスブックでキャラクターを前面に押し出すと、フェイスブックという企業自体をアピールすることになり、毎日使うインフラの域から逸脱してしまいます」(日高氏)。
それでは、なぜスタンプを付けたのか。日高氏は断言しなかったが、理由のひとつにユーザーからの要望があったのは確かのようだ。「Facebookは人と人をつなぐためのツールです。利用者が使いたいもの、使いやすいものを考えて商品開発をしています」(日高氏)。
いずれにせよ、フェイスブックはスタンプをそこまで重視していない。大規模なアップデートやスタンプの追加なども、近々には予定されていないという。「スタンプの導入はドラスティックなものではなく、利用者の選択の幅を広げるものだと捉えて下さい」(日高氏)。
スタンプはあくまでユーザーの表現の幅を広げるだけというフェイスブックに対し、積極的にキャラクターマーチャンダイジングに乗り出しているLINE。スタンスの違いはあれ、フェイスブックが採用するほどにスタンプを用いたコミュニケーションは一般的になっており、その立役者はLINEといって差し支えないだろう。
表現の選択の幅を広げるだけでなく、LINEのようにどこまでソーシャルメディアのビジネスにつなげられるか? 次回からは、スタンプに活路を見いだす企業の取り組みを取り上げたい。
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