サービス開始からわずか23ヶ月で、世界1億5000万ユーザーを突破したチャットアプリ・LINE。成功の要因に、「スタンプ」と呼ばれるイラストの力があったことは疑いようがない。二匹目のドジョウ(?)を狙ってさまざまなサービスが追従するなか、ついにSNSの大物フェイスブックまでがスタンプ機能の提供を始めた。その狙いとは。
渋谷ヒカリエにあるLINE株式会社の受付に向かうと、2m近い巨大なぬいぐるみが出迎えてくれる。いずれも同社のスタンプのキャラクターだ。
無料通話・チャットがウリのサービス「LINE」の収益源は大きく3つ。オリジナルゲームのアイテム課金、企業の公式アカウント開設・運営料およびスポンサードスタンプの配信料、そしてスタンプ課金だ。スタンプは1セット170円前後で販売しており、オリジナルキャラクターに加え、ディズニーやサンリオなどの有名キャラクターがアプリ内のショップに並ぶ。
LINE株式会社の2013年第1四半期の業績を見ると、売上額58.2億円のうちスタンプによる収益が約30%を占めるという。無料が前提でマネタイズが難しいソーシャル系サービスの中でも、LINEのスタンプ課金は一つの筋道を示した成功例と言える。
ところが、スタンプはLINEにとって「偶然の産物」のようだ。LINE株式会社執行役員の舛田淳氏によると、LINEの開発時にスタンプという発想はそもそもなかったという。「当初は絵文字や顔文字も入れておこうね、程度の認識でした。特徴付けする課程でデザインチームから上がってきたものを試したら、すごく良かった。それがスタンプです」(舛田氏)。
舛田氏は、スタンプ成功の要因はサイズにあったと指摘する。絵文字より大きいスタンプには、より多くの情報を詰め込める。「絵文字は文章に付随して、そのニュアンスを伝えるだけのものでしたが、スタンプは文章と絵文字が合わさった量の情報を持っています」(舛田氏)。その結果、ユーザーがスタンプだけで意思疎通できるようになったわけだ。
スタンプの影響は、アプリ上だけにとどまらない。LINE株式会社では、スタンプに登場したキャラクターをあしらった文具やぬいぐるみといったグッズを販売。さらに、マンガやテレビアニメなどのコンテンツにも進出している。
舛田氏の狙いはLINEというサービスを「太く」することだ。「我々は収益モデルをひとつに決めるべきではないと考えています。特定のユーザーに付加がかからないよう、バランスよくビジネスをしたい」(舛田氏)。まさにスタンプはソーシャル系サービスのビジネスをガラッと変える可能性を秘めている。
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