前回に引き続き、DETUNEのポケコンアプリ「DPC-100」座談会記事後編をお送りします。前編の「iPhoneでポケコン? 脳内から生まれたアプリが一部で話題に」と合わせてご覧ください。
DETUNE社のポケコンアプリ「DPC-100」特別座談会の模様、その後編。
と、その前に、ここまで普通に使ってきた「ポケコン」という言葉は一体何なのか。今の若い世代には、若干説明が必要かも知れない。
ポケコンとは「ポケットコンピューター」の略。1980年代に学生、エンジニア、ホビープログラマーを中心に愛用された、文字通りポケットに入るコンピューターのことである。見た目は関数電卓に近いが、入門用プログラミング言語として当時一般的だったBASICが使えた。何より自由にプログラミングできるマシンでありながら、小さく、軽く、安い。それがポケコンの魅力である。
1980年代といえばデスクトップパソコンしかなかった時代。1985年に登場した世界初のラップトップパソコン「Toshiba T1100」も、4kgというヘビー級で、しかも5000ドル以上と高価だった。そんな時代に、わずか数万円で買える、数百グラムの、自由にプロラミング出来るマシンがあれば、人気が出ないほうがおかしい。
言い換えるならば、この時代のユーザーのほとんどは、プログラミングがしたくてしょうがなかったのである。そしてポケコンは画面表示が貧弱であっても、そうしたコンピューティングの本質的ニーズには、しっかり応えることができた。余計なものが無い純粋なロジックマシンとしての魅力は、iOSディバイスの身体を借りたことで、かえってはっきりした感もある。
そんなDPC-100に宿るポケコン文化とは何なのか。では座談会の続きをどうぞ。
DPC-100 | |||
---|---|---|---|
価格 | 850円 | 作者 | DETUNE Ltd. |
バージョン | 1.3.0 | ファイル容量 | 4.1 MB |
カテゴリー | ユーティリティ | 評価 | (4) |
対応デバイス | iPhone 3GS以降、iPod touch(第3世代)以降、iPad | 対応OS | iOS 5.0以降 |
それでも世界で3人くらいに刺さっている
船田 ポケコンって乱暴に言っちゃうと、日本独自のコンピューター文化なわけじゃないですか。アメリカはアメリカでTI(Texas Instrumentsの電卓)があったりして、各国にも似た文化はあったと思うんですけど、iPhoneはワールドワイドなプロダクトになれるんで、何かその辺は?
佐野 いや、海外は数字を見ても、まったく刺さっていないことが判明しておりまして。でも時代なんですね。不思議なことに2~3人、異常に刺さっている人がいまして、やたらメッセージをくれるっていう。MIDIをコントロールしたいって言ってる人もいましたよ。
―― あ、やっぱり。
佐野 DS-10とかM01をよく取り上げてくれていたPalmsounds※1という海外のブログがあって、そのブログの人が「DPC-100にサウンド機能が搭載された」「これが君たちの音楽製作を変えると思わないけど楽しい!」って熱く書いてくれたんですけど、たぶんブログの読者には誰にも刺さってないと思います。まあ、そういう熱い方が世界で数人。
船田 見たこともないものを作るのが最高なわけじゃないですか、エンターテインメントとしては。それでどうやら日本人はこういうのを使ってたみたいだぞ、というだけで価値があると思うんです。変なものじゃないですか、コンピューターとしては。それに対してはリスペクトしちゃうところはあると思いますけど。
佐野 で、アニメの「ロボティクス・ノーツ※2」にポケコンが出ているというので、うまいことそこからジャパン・エキスポ的に浸透してくれれば。どうやら日本にはポケコンがあるらしい、ワットイズポケコン? みたいな感じで調べたらこんなのが出ているという流れになって、5pb.さんから連絡をいただければ、もうすぐに作るんですけど!
※1 PalmsoundsのDPC-100関連エントリー。「DPC-100 gets some sounds」というエントリーには「Anyway, there's no doubt that that the sound capability won't change your music workflow, but I'm sure it'll be fun!」と。
※2 5pb.のXbox 360/プレイステーション3用のゲームをアニメ化したもの。2013年3月までフジテレビ「ノイタミナ」枠で放送されていた。
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