米マイクロソフトは米国時間の4月16日よりパブリッククラウドであるWindows Azureの「インフラストラクチャ サービス」の正式運用を開始した。4月17日には、日本マイクロソフトがWindows Azureの機能拡張とパートナー連携強化について説明した。
PaaSに加えてIaaSを提供へ
Windows Azureのインフラストラクチャ サービスは昨年からプレビュー版として提供されてきたもので、今回IaaSである「Windows Azure仮想マシン」や安全に接続するための「Windows Azure仮想ネットワーク」などが正式に提供される。2010年2月から商用サービスを開始してきたPaaSに加え、今回の発表でIaaSも提供されることになった。冒頭登壇した日本マイクロソフト 業務執行役員 加治佐 俊一氏は、「PaaSだけではなく、IaaSまでフルスタックで提供できるようになった」とアピールした。パートナー各社からもWindows Azureインフラストラクチャ サービスへの対応が表明されている。
サービスの詳細を解説した日本マイクロソフト サーバプラットフォームビジネス本部の吉川顕太郎氏は、久しぶりの発表会ということで、過去10ヶ月のAzureのアップデートを紹介した。たとえば、メディアのエンコーディングやストリーミングを行なう「メディアサービス」やビッグデータ向けのApache Hadoopを提供する「HD Insight」、Azureのコンソールからサードパーティのコンポーネントを利用できる「ストア」のほか、Active Directoryやモバイルサービスも拡充してきたという。
今回、正式に提供されたWindows Azure仮想マシンは、文字通り仮想マシンを提供するIaaS。Windows Server 2008 R2と2012の64ビット版のほか、Linuxもサポート。「ギャラリー」からCentOS、Ubuntsu、SUSEなどを選択できる。また、SharePoint ServerやSQL Server、BizTalk Server、System Center、Forefront Identity Manager、Project Server、Team Foundation Serverなど各種サーバー製品もギャラリーから選択できる。オープンソースコミュニティのイメージも追加されており、マイクロソフトユーザー以外にもアピールするという。
さらにHyper-V上の仮想マシンイメージを転送して実行したり、ギャラリーのテンプレートから仮想マシンを構築することも可能になっている。同一アベイラビリティセット内に複数インスタンスを稼働した場合のSLAも、99.95%を確保した。4コア/28GB、8コア/56GBというメモリ集中型インスタンスも新たに提供される。Windows Azure仮想マシンに対応した製品やサービスもAzure Circleパートナーから発表されている。
一方の仮想ネットワークはWindows Azureのデータセンター内に、ユーザー独自のネットワークを構築できるサービスになる。オンプレミスのネットワークとの間でインターネットVPNを構築することで、ユーザー側のシステムとクラウドをシームレスに接続することが可能になるという。こちらもアライドテレシス、インターネットイニシアティブ、シスコ、ジュニパー、ヤマハなどが仮想ネットワーク対応パートナーとして発表されている。
Windows Azureのライセンスは、仮想マシンのインスタンス単位の時間課金。ボリュームライセンスプログラムの特典であるライセンスモビリティの権利を使いライセンスを持ち込むことも可能になっている。今回は、仮想マシンおよびクラウドサービスのインスタンス価格を21~33%程度低減し、業界標準の価格帯にあわせたという。
吉川氏は、Windows Azureのメリットについて「IaaSでは3階層システムをそのまま持ち込めるし、構成の柔軟性も高い。一方で、PaaSは運用や開発環境をマイクロソフトに任せることができる。両者を混在できるのが、Windows Azureの最大の特徴」とアピールした。