大谷イビサのIT業界物見遊山 第1回
「売りよし」「買いよし」を目指す日本流マネージドビジネスの新潮流
KDDIもNTTも!IT版御用聞きサービスがもてはやされる理由
2013年04月04日 09時00分更新
御用聞き営業はエンドユーザーにもメリットがある
一方、ベンダーとしてもこうしたサービスを展開する通信事業者との提携は望ましい。ご存じの通り、日本の中小企業ではICT活用が遅れているため、潜在的な市場規模は大きい。しかし、多くの外資系ベンダーではこうした中小企業市場の開拓に苦労しており、さまざまな施策が徒労に終わっている。その点、足回りの強い通信事業者の営業体制は魅力的。通信事業者の営業マンが自社製品も売ってくれるからだ。マイクロソフトやデルが、NTT東日本と提携したのも、こうした背景がある。
もちろん、エンドユーザーにとってもワンストップで導入や運用が済むのは大きなメリットである。専任の管理者のいない100名未満の会社では、ITの導入権者が総務部の担当やいきなり経営者になってしまう。そのため、本業については詳しいが、ITに関してきちんと理解できている人は少ない。こうした現状を考えると、SIerの豊富な知識や高尚な提案は不要で、総務部や経営者の話を同意しながら聞くようなエントリ営業マンがむしろニーズにフィットする。KDDIまとめてオフィスでは、研修代わりに新人に営業を担当させることも多いとのことだが、こうした狙いがあるのだろう。
このようにIT版御用聞きサービスは、通信事業者の人材活用、ベンダーの中小企業開拓、そしてエンドユーザーのワンストップ需要をそれぞれをきちんと満たす。その点、「売りよし」「買いよし」「世間よし」という近江商人的なサービスといえるのかもしれない。ユーザーのビジネス課題を聞き出し、ITとは異なる解決策も含めて、楚々と提案する。なんとなく日本の風土にあったサービスのような気がするのは、私だけだろうか?
通信事業者だけでなく、複合機のベンダーも実は同じような事情で似たようなサービスを拡充しているので、いずれ1つのフィールドで戦うことになってくる(この話はいずれ……)。こうした中、今後はこの手のサービスは「マルチベンダー化」「プラットフォーム化」が大きなキーワードになってくると考える。ユーザーニーズ主体の“御用聞き”とは、どこまでいってもそういう商売なのだ。マイクロソフトやデルの例を見るまでもなく、ベンダーは囲い込みたがるが、サービス提供側は自社製品へのこだわりをどこまで捨てられるかが、シェア拡大の鍵となるだろう。
筆者紹介:大谷イビサ
ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。
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