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まかふぃーぶはじめました 第20回

電脳系物理排除型魔法少女「マカルージュ!」

魔法少女(物理)見参!第2話「その名はマカルージュ」

2013年04月27日 11時00分更新

文● 藤春都 イラスト●もち夫

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魔法少女(物理)見参!

 さらに数日後、一同のもとにはマルウェアに感染した女子高生のスマホからぞくぞくと情報が送られてきていた。

「来ました、女子高生のアドレス帳です」

「お、こっちはメールのログだ。うーん、意味のない顔文字だらけの会話してるね」

「…………」

「うむ。して、『あれ』は到着したか?」

「『あれ』?」

 部下三名がいっせいに首を傾げる。

明らかに裸なハズの入浴写真よりも下着姿を格上に置くリーダー。どうにもマニアックである

「決まっているではないか、女子高生の写メだ! 友達同士の記念写真、SNS用の自撮り写メ用にキメ顔をしたらブレてただの変顔になった写真、友人同士での風呂、着替え、そしてなにより女子高生の下着写真があるはずなのだ!」

「あ、あるかなあ……」

「我々には決して手の届かぬ領域だが、彼女にとってはごく身近な存在だからな。きっとめくるめくショットが山のように、ぐふふふふ」

「リーダー、鼻血、鼻血」

「──写真アルバム、転送確認しました!」

「よくやった、さあ今すぐデータを開くのだ! 桃源郷はすぐそこ……」

──そこまでよ!

 突如としてその場に響き渡った声に、一同ははっと振り返った。

「な、誰だっ」

「なぜこのアジトにっ」

 口々に叫んだが、しかしその姿は見えない。

 声の主とおぼしき少女の姿は、神々しい光によって隠されていたからである。

「マカフィー・セキュリティ・パワー・メイクアップ!」

 どこからともなくぴろりらと音楽が鳴り出し、赤やピンクの光が少女の身体を照らし、同じ色のリボンがほっそりした身体に巻き付いていく。*光の処理によって肌色がまったく見えないのは痛恨の極みである。

 *BD/DVDでは消えますのでご安心ください。

 やがて現れたのは、赤と基調としたフリルたっぷりの服を着て、ミニスカートにブーツ、頭には大きなリボンを飾った少女だった。

やっと出てきた主役。「マカフィー・セキュリティ・パワー・メイクアップ!」という掛け声と共に変身する設定だが、初稿を見た担当が「えっ、マカフィーさんをそこまで巻き込むの!?」とあからさまに嫌な顔をしたことは忘れられない

マカフィー・ルージュ、ただいま参上!

 ドーンという波濤のSEとともに、少女ことマカフィー・ルージュ(以下、長くてめんどいのでルージュ)は宣言した。

「ちょっと待て、魔法少女が敵の前で変身していいのか!?」

「仕方ないでしょ、そうしないと決め台詞を文中に出せないんだから!」

「大人の事情って面倒だね……」

「と、とにかくっ、何も知らない女の子たちを騙して、マルウェアを入れさせて個人情報を盗み取ろうなんてそうはいかない! お天道様が許しても、このマカフィー・ルージュが許さないんだから!」

Q:ソーシャルセキュリティ対策は?
A:レベルを上げて物理で殴れ

「黙れ黙れ黙れッ! おいお前たち、やってしまえっ」

 リーダーの指令のもと、部下三名がいっせいにルージュに襲いかかる。

「ふははは、覚悟するのだマカルージュとやら!」

「ちょっと、いちばん大事なスポンサー様の名前だけ省略しないでよ!」

「ズルいよリーダー、自分一人だけ戦わないなんてっ」

 リーダーに文句を言った蓮は、しかし次の瞬間、殴り倒されて地面に這いつくばった。

「がふっ」

「れ、蓮!?」

「ふっ、あんたたちなんて、この『ウイルスころし』の敵じゃないのよ!」

 いつの間にか、ルージュは身の丈以上もあろうかという巨大な剣を構えていた。

「待て、それどう見ても魔法少女のアイテムじゃないよな!」

「もっとステッキとかそういう……」

「つーかそれベルセr」

「うるさいわね魔法少女が持ってたら何でもマジックアイテムなのよ!」

 残るジルベールと如月も見る間にルージュによって殴り倒されていく。そのたびにぼごっとかばぎっとかいう何かが砕ける鈍い音がして、とてもとても……痛そうだ。

「ふはははは、思ったよりやるではないかマカルージュよ! ここは私がげふっ」

 威勢良く言いかけたイチトだったが、彼も途中でたちまち『ウイルスころし』にぶん殴られて吹っ飛び、沈黙した。

「ああ、勝利はいつも虚しい……」

さすがリーダー、ブレない漢である

 ひとり遠い目をするルージュだったが、すぐに異変に気づいた。足下に這いつくばったイチトが、ずりずりと這いずりながらカメラを構えていたのだ。相手を油断させながら、下方向から、ベストショットを狙って。

「ふふふ、油断したなルージュとやら……我が秘蔵のコレクションの一部となることを誇りに思うがいい……」

「へ、変態ッ、ヘンタイいいぃぃぃ!!」

 もはや大剣の存在も忘れたルージュが、無我夢中でリーダーを何度も踏み潰す。

「がはっ、げふっ、あ、あと少しっ」

「いやああああああ!!!」

 ──こうして、悪は滅びた。

エピローグ

「ふっ、イチトがやられたか。しょせん奴は四天王の中でも一番の小物……」

「リーダー、自分で言って自分で落ち込まないでください」

「ねえ、次は僕に行かせてよ。あんな少女なんて名乗るのもおこがましい年増、僕がぼこぼこにしてみせるよ!」

「ふっ、いいだろう。楽しみにしているぞ、蓮」

プライバシーを我が手に!

<第3話へ続く!>

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