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オールフラッシュアレイ戦略を読み解く

急がば回れ?フラッシュOS開発の道を選んだネットアップ

2013年03月04日 06時00分更新

文● 渡邊利和

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パフォーマンス要件だけを満たすわけではない

 同社のビジネスデベロップメント担当シニアディレクターのMohit Bhatnagnar氏は、ユーザー企業がオールフラッシュストレージに求める要件として、「パフォーマンス(性能)」「ケーパビリティ(機能性)」「エフィシエンシー(効率)」「スケーラビリティ(拡張性)」の4点を挙げた。

発表後に個別Q&Aセッションで質問に答えた同社のSenior Director, Business DevelopmentのMohit Bhatnagar氏

 パフォーマンスは言うまでもないだろう。ただし、速ければよいというものでもなく、エンタープライズストレージとして当然に求められる運用管理性や高可用性といった機能面でも高水準なものが求められる。この点では、新進のベンチャーの製品よりも長年に渡ってエンタープライズストレージのベンダーとして実績を積み上げてきたネットアップの有利な点で、同社の関係者も口を揃えて強調したが、今回のEF540はまず、オールフラッシュストレージとして求められるパフォーマンスに加えて、エンタープライズストレージに求められる機能性も加えた製品としてリリースされたわけだ。

 残る要件である効率性/拡張性に関しては、EF540ではなく、次世代製品であるFlashRayでカバーされる。FlashRayでは、インラインでの重複排除やデータ圧縮がサポートされる予定であるほか、既存のData ONTAPとの親和性も向上し、同様の拡張性を実現するものとされている。パフォーマンス特化型のEシリーズの発展系としてEF540を位置づけるなら、FAS系/Data ONTAP系をフラッシュに最適化する形でFlashRayが登場すると考えてもよさそうだ。

FlashRayの主な特徴。現時点では開発中の製品であり、予定としてみるべきだろうが、インラインでの重複排除/データ圧縮やクラスタアーキテクチャで自動的な負荷分散、Data ONTAPとの間でのレプリケーションやバックアップ、オブジェクト単位でのデータ管理、などの要素が挙げられている

 なお、もう1つの論点である「SSDかRaw Flashか」という点については、EF540とFlashRayで使い分けが考えられているわけではないという。現状では同社として明確な方針は打ち出しておらず、EF540/FlashRayのいずれに対してもSSD/Raw Flashの両方をユーザーニーズに応じて利用できるようにしていくことを考えているという。現時点での対応はSSDが中心だが、いずれは何らかの形でRaw Flash型のモジュールが投入される可能性もあるだろう。

 当然ながら同社ではフラッシュがHDDを完全に駆逐するとは現時点では考えていない。まさに適材適所で、用途/要件に合わせて使い分けられる選択肢の広がりとして捉えている。そのため、現時点ではEシリーズのストレージが全てオールフラッシュ化するとまでは言われていないし、FAS系がHDDのままで留まるともされていない。やや混沌とした未来像だが、新技術を前面に打ち出していくベンチャーに対し、ネットアップは地位を確立したエンタープライズストレージベンダーであり、ユーザーニーズを重視する立場を堅持するということだろう。

同社の精鋭がFlashRayの開発を手がける

 FlashRayの開発プロジェクトを手がけているのが、日本法人社長を務めていたタイ・マッコーニー氏だ。同氏は昨年秋、本社に帰任し、フィールドオペレーション担当バイスプレジデントとしてFlashRayの開発プロジェクトをリードしている。同氏によると、FlashRayの開発はネットアップ社内でも独立性の高い“社内ベンチャー”という体制で進められているという。

長らく日本法人社長を務めた後、昨年秋に本社に帰任したタイ・マッコーニー(Ty McConney)氏。現在はVice President, HQ Field Operationsという立場でFlashRayの開発プロジェクトをリードしているという

 開発を指揮しているのは、同社の前CTOで現在はシニアバイスプレジデントのブライアン・パウロフスキー(Brian Pawlowski)氏だ。同氏は18年ほど前からフラッシュメモリの可能性に注目し、同社製品に“FlashCache”“FlashPool”“FlashAccel”といった形でフラッシュメモリを取り込んできた立役者とも言える人物であり、今回はFlashRayの開発チームを直接指揮するためにCTOという立場から現場に復帰したのだという。

製品発表に続いて行なわれたパネルディスカッションの登壇者。向かって左端にいるのがNetAppの前CTOで現在はFlashRayの開発を指揮するシニアバイスプレジデントのブライアン・パウロフスキー(Brian Pawlowski)氏

 当然開発チームは同氏の元に社内のトップレベルの精鋭が集まっているといい、同社がどれほど真剣にFlashRayに取り組んでいるかが伺える体制となっている。また、マッコーニー氏が日本の事情に通じていることもあって、日本市場への対応も手厚いものとなりそうだ。現時点ですでにFlashRayのストレージOSは日本語にローカライズされる予定となっているほか、マッコーニー氏自らが日本に行ってパートナーや主要ユーザー企業などと情報交換を行ない、FlashRayの市場投入に向けた準備に着手するという。ベータプログラムに日本のユーザー企業が参加するかどうかは「現時点ではまだ未定」とのことだったが、同氏が日本市場をきわめて重視していることは間違いないだろう。

(次ページ、ベンチャーとの開発競争に対して)


 

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