テレビメーカーからの脱却を目指す
その基調講演において、パナソニックが訴求したのは、テレビメーカーからのイメージ脱却だった。
津賀 「今回の基調講演は、テレビメーカーであるパナソニックはテレビが不振だから業績が悪いという単純なものではないことを示すとともに、パナソニックがどんな領域で事業をしているのか、パナソニックはどんな方向に行くのか、我々のDNAはどこにあり、強みの源泉はどこに作っていくのかということをもう一度、社内外に発信するいい機会であった」
そこには、「パナソニックの本当の姿はこれである、ということを正しく伝えたい」という、津賀社長の気持ちがあった。今回の基調講演に、AVC社社長ではなく、津賀社長自らが登壇したのも、そうした狙いがあったからだろう。
日本人さえ知らないパナソニック
実際講演のなかでは、日本人でさえ知らないようなパナソニックの真の姿が公にされた。
例えば、パナソニックが、全世界の航空会社275社が所有する5000機以上の旅客機に、機内エンターテインメントシステムや通信機器を提供し、2012年には5億人以上がそのサービスを体験しているという実績。これまでのパナソニックのイメージにはないものだ。
そして、「これは社員でさえも気がつかないものだった」と津賀社長は指摘する。だからこそ、社外への発信ではなく、社内外への発信という言葉を使ったのだ。
津賀 「私は、社長指名を受けたあとの2012年4月に本社に来たが、それまでの役員という立場であったとしても、巨大なパナソニックという会社の全貌を理解することはできなかった。組織としても分かりにくい環境にあったと言える。いま、これを改善することに取り組んでいる。私は、社員全員が、パナソニック全社のマクロの姿と、各事業のミクロの姿の両方を見ながら、これらを繋げていくという発想を持つことが重要であると考えている」
基調講演は、社員に向けての意識改革のひとつの取り組みであったともいえよう。
パナソニックの売り上げ構成比をみると、2012年3月実績で、デジタル家電を担当するAVCネットワークスは全体の17%。白物家電などを担当するアプライアンスは15%。2つの事業をあわせても、全体の約1/3に過ぎない。残りの2/3は、システムコミュニケーションズ、エコソリューションズ、オートモーティブシステムズ、デバイス、エナジー、ヘルスケアといったようにBtoBソリューションが占める。
つまり、我々が持つ、パナソニックはテレビメーカーや家電メーカーである、という印象とは、大きく異なるのがパナソニックの本当の姿なのだ。
「なにがパナソニックなのか」――。その答えは、BtoBに強みを持つ総合電機メーカーということになる。
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