ARM v8ベースのCPU開発で先行するAPM
2011年10月にARMが発表したニュースリリースには、米Applied Micro Circuits Corporation(APM社)とNVIDIAの2社がメッセージを寄せており、この2社はARM v8のアーキテクチャーライセンスを受けて、自社でCPUを開発していることが明らかにされている。APMは、ARM v8の仕様が発表された2011年10月の「ARM TechCon 2011」の会場で、自社で設計したARM v8対応CPUをFPGA上に搭載し、その動作デモを披露した。
APMの製品は「X-Gene Platform Architecture」と呼ばれ、以下のような特徴を持つ。
- 動作周波数は2.5~3GHz程度
- 2~128コアを集積
- CPUパイプラインは4命令同時発行のアウトオブオーダー
- TDPは動作周波数に応じて可変。待機時の消費電力は300mW以下
X-GeneはまずTSMCの40nmプロセスで、次いでTSMCの28nmプロセスでの投入を目指しているという(上の動作周波数やTDPの数字は28nmのものと思われる)。製品投入時期は2011年12月となっており、これはCortex-A57/A53を使った製品に、1年近く先行するものとなる。すでにAPMは、ARMおよびRed Hatと共同で、サーバーマーケット向けのOSを共同開発していることも明らかにしており(関連リンク)、単にCPUだけでなく、必要なソフトウェア環境についても順調に整備が進んでいることもうかがわせる。
もう一方のNVIDIAはと言うと、2011年1月に開催された「International CES 2011」の際に、独自のARMベースCPU「Project Denver」を発表したものの、その後の進捗は「順調」だとか「すばらしい」以上の説明がない。2012年中には、もう少し詳細な発表があると予想されているが、評価ボードやソフトウェア環境などに関する話が皆無なあたり、APMよりも先に製品を投入する可能性はまずないと言える。
自前でCPUパイプラインを改良できる
ARMのアーキテクチャーライセンス
APMやNVIDIAのように、アーキテクチャーライセンスを受けて独自CPUを開発する半導体メーカーは少数派だ。半導体メーカーのほとんどは、アーキテクチャーライセンスではなく、CPUのライセンスを受ける。その理由は何かと言うと、アーキテクチャーライセンスはリスクが高いギャンブルだからだ。アーキテクチャーライセンスを受けるメリットとデメリットを整理すると、おおむね以下のようになる。
アーキテクチャーライセンスのメリット
アーキテクチャーライセンスは独自命令の拡張が可能である。ARM v8の命令セットや基本的なアーキテクチャーとの互換性は必要だが、その上で独自に命令や機構を追加するのは自由。CPUライセンスの場合、こうしたことは一切できない。
CPUライセンスを取得するケースと比較して、アーキテクチャーライセンスは1年程度先行して開発が始められる。これにより、早期に製品を投入して先行者利益を確保することも可能となる。CPUライセンスはアーキテクチャー発表から1年程度遅れるうえ、複数メーカーに対して同じタイミングでCPUのIP提供が始まるから、CPUコア自身での差別化は非常に難しい。
アーキテクチャーライセンスでなら、CPUパイプラインに手を入れ放題。十分に技術力がある、あるいはCPU関連で有用な特許を多数持ち合わせるメーカーならば、アーキテクチャーライセンスを受けて自社でCPUパイプラインを作り込むことで、ARM純正よりも高性能なCPUコアを作ることができる。
だがCPUライセンスの場合、パイプライン自体は一切いじれない。許される改良は、1次キャッシュの構成や容量を、いくつかのオプションから選択するといった程度だ。有用な特許を持ち合わせていても、それを自社製品のCPUパイプラインに入れることができない。そのためCPUの高速化はパイプラインの外、2次キャッシュやコア間のインターフェース構成などを最適化する程度しか方策がない。
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