価格帯別ヘッドフォンレビュー エントリー&ミドルレンジ編
1万円以下で買えるコスパに優れたヘッドフォンはこれだ!
2012年08月08日 12時00分更新
低価格バランスド・アーマチュア型と
ダイナミック型が激突する5000円前後クラス
ヘッドフォン製品で5000円前後の製品は、付属ヘッドフォンから買い換えを検討した際に、真っ先に候補になるボリュームゾーンとなる価格帯だ。
冒頭でも触れた通り、かつては1万円以上するヘッドフォンで採用されていたバランスド・アーマチュア型の「XBA-1SL」(ソニー)を投入したのが最大の目玉。一方で、ダイナミック型はビクターの「HA-FXD80-Z」、ソニーの「DR-EX310SL-B」、オーディオテクニカの「ATH-CSK77」、ゼンハイザーの「CX300」とバリエーション豊かな製品が揃う。
それでは製品別、プレイヤー別に音質をチェックしていこう。
ウォークマンとの組み合わせがベスト
ビクター HA-FXD80-Z
エンクロージャー(音響筐体)の先端にドライバーユニットを直接固定した新構造の”ダイレクトトップマウント構造”を採用した、高解像度志向サウンドのモデル。新開発の“カーボンナノチューブ振動板搭載マイクロHDユニット”を採用する。実売価格は5800円ほどと、このクラスの中では若干高い。
・iPod touch + HA-FXD80-Z
高解像志向のサウンドに偽りはなく、音をダイレクトに再現する。ダンス系ミュージックの「Chase the world」は、ガンガンと鳴り響くビートの個々の音主張が激しく、ボーカルもかなりナーバスな鳴らし方になりやすい。ロック系ボーカル曲の「リアルワールド」は一転して、聞いていて気持いい鳴らしっぷりで、誇張なく伸びる女性ボーカル、適度にグルーヴ感のある重低音を聞かせる。「無想曲」はピアノの美しさ、弦楽器の繊細さも出せて音楽を“音楽”として聴ける。音のポテンシャルは高いが、若干曲を選びそうだ。
音質評価:★★★★★(5)
コストパフォーマンス:★★★★★★★(7)
・ウォークマン + HA-FXD80-Z
基本的にはiPod touchと同傾向なのだが、携帯音楽プレイヤーの音としてはウォークマンの方が相性はいい。「Chase the world」は耳につく傾向はあるが、ボーカルも存在感を主張し、バックに流れるコーラスなどを聞き取ることができる。「リアルワールド」はボーカルもしっかり立つし、ギターにも描写力がある。低音はドコドコと量的にも持たせて響かせるタイプだが、女性ボーカルも引き立てて、音楽としての完成度はバツグンの鳴らし方だった。「無想曲」は弦楽器の繊細さをよく鳴らし、ピアノも明瞭で丁寧に音を響かせる。この価格帯で鳴らせる音としては文句ナシだ。
音質評価:★★★★★★(6)
コストパフォーマンス:★★★★★★★★(8)
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意外にもウォークマンとの組み合わせでも伸びず
ソニー XBA-1SL
昨年11月にソニーが満を持して発売した、自社製バランスド・アーマチュアタイプのヘッドフォン。本機はそのエントリーモデルとなる1基タイプのモデルで、フルレンジのバランスド・アーマーチュア・ドライバーユニットを搭載している。実売価格は3700円ほど。
・iPod touch + XBA-1SL
シングルのバランスド・アーマチュア型として、独自の硬さのあるサウンドに特徴がある。「Chase the world」ではボーカルはやや硬く強く存在感を出し、高域はきらびやかに響かせる。低音は唸るようなサウンドと重低音のバランスを抑えてとっている。「リアルワールド」でもボーカルはひと癖あり、トーンが低め。ギターサウンドは相性抜群で、心地良く歯切れのいい音を聞かせてくれる。ベースラインのサポート感とバランスも絶妙。「無想曲」は中域に厚みを乗せており、ピアノの音はナロー。弦楽器の繊細さが失われてしまい、美しくは響かない。曲の細部よりメロディー重視といったところか。
音質評価:★★★★(4)
コストパフォーマンス:★★★★★(5)
・ウォークマン + XBA-1SL
低音の鳴らし方を、パワフルなサウンドとして昇華させているダンス向きの組み合わせ。「Chase the world」では高域が強く、ボーカルの「サ行」が耳につきやすいものの、ボーカルを前に押し出しながら重低音の唸るグルーヴ感をうまく出す、パワフルなサウンドは絶妙。ただ、声のディテールが硬いイメージがある。「リアルワールド」もボーカルが硬く聞き取りやすい。ドラムのハリのある音が心地良く、ベースラインも適度。「無想曲」ではピアノの音も硬く、精細な音の広がりは出せていない。弦楽器も明瞭さが失われ、存在感が弱い。音の方向性がはっきりとしているので、パワフルな音楽を聴くならイチオシだ。
音質評価:★★★★(4)
コストパフォーマンス:★★★★★(5)
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低音の主張がやや強い
ソニー MDR-EX310SL-B
ソニーが以前から「NUDE EXモニター」シリーズとして展開している、ダイナミック型モデル。「プロによる音楽制作の現場で培ってきたノウハウを生かしたモニタ志向のサウンド」を特徴としている。密閉性を強化した新開発「ノイズアイソレーションイヤーピース」を採用する。実売価格は3900円ほど。
・iPod touch + MDR-EX310SL-B
モニター系らしい高解像度のサウンドだが、低音の鳴らし方にひと癖ある。「Chase the world」では、ドコドコとした量的なボリュームのある響きを伴った重低音のサウンドが耳につく。曲全体として聞くと、低音により個々の楽器の音が打ち消されているのが残念。「リアルワールド」では細部まで描写しており、他機種には聞こえないボーカルのキメ細やかさがあらわれ、曲全体の楽器にも発見がある。ただ、重低音はやはりドコドコと鳴り、ぼやけ感がある。「無想曲」はピアノの音も単純なメロディーのみならず、響きを伴い、弦楽器も音のディテールまで踏み込む。音楽全体を精密描写するようなサウンドで、インストゥメンタルにはベストマッチだ。
音質評価:★★★★(4)
コストパフォーマンス:★★★★★★(6)
・ウォークマン + MDR-EX310SL-B
iPod touchと傾向は近いものの、音の解像度志向はよく活きる組み合わせだ。「Chase the world」は、ドコドコと響く低音が耳につきやすいが、曲全体をよく聴き取れた。ただし、ボーカルが音楽に埋もれがちな傾向がある。「リアルワールド」でもボーカルはちょっと厚みがないうえに低音に負けがちだが、良い意味で硬さがなく、声のディテールを聴き分けることは可能だ。「無想曲」は弦楽器の描写がやはり素晴らしい、奥行きあるサウンド。ピアノはメロディーの存在感が薄れるが、情報量を出せているのは流石だ。
音質評価:★★★★★(5)
コストパフォーマンス:★★★★★★(6)
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