375W枠に収めるために
Radeon HD 7990は7950のデュアル仕様に?
話をロードマップに戻し、今後の話を判明いる範囲で説明しよう。AMDは今後、GCNベースで「New Zeland」と呼ばれる製品を投入する。時期としては2012年の6月、IT関連展示会「COMPUTEX TAIPEI 2012」に合わせて発表する、というのが目下の予想である。構成に関しては、Radeon HD 7970のままデュアルGPU化するという話と、Radeon HD 7950をデュアルGPU化するという2つの可能性がある。
個人的には、さすがにRadeon HD 7970のままデュアルGPUはないだろう、と思っている。現状のRadeon HD 7970は消費電力が最大250Wにも及ぶので、これ単純にデュアルGPU化すると500Wである。PCI-SIGの定めた300Wという電源の制限はぶっちぎる覚悟だとしても、現実問題として375W以内に抑えないと、ユーザーが利用するのが難しいという問題がある。最大消費電力が200WのRadeon HD 7950をデュアルGPUにした場合なら、若干動作周波数を抑えればこの枠内に収まる計算になる。
この375Wというのは、電源の供給に関する問題だ。現状PCI Expressの場合、カードエッジから最大75Wを供給できるほか、補助電源端子から75W(6ピン)/150W(6ピン+6ピン)/225W(6ピン+8ピン)を供給可能で、合計で最大300Wという制限になっている。これを受けて電源は通常、6ピンに75W、8ピンでは150Wを供給する構成にしている。
この状況で300Wの枠を破って供給するとなると、一番可能性が高いのは8ピン+8ピンというもので、カードエッジ75W+8ピン150W×2=375Wというわけだ。そんなわけで今回のロードマップでは、Radeon HD 7950×2の構成を示した。ちなみにこれ以外についてはというと、Radeon HD 6700以下に関しては、引き続き現行のまま販売を継続することをAMDが公式に発表しているので、おそらくこの市場にSouthern Islandsの新製品は投入されない。
なぜならAMDの場合、このマーケットはAPUで置き換えを図ってゆくのが基本方針であるからだ。ただしインテルプラットフォーム向けはAPUでは代替できないので、こうした市場向けにGPUを用意する、という扱いである。メインストリーム以下の市場の場合、積極的にGCNでアーキテクチャー刷新を図るべきニーズもないし、ハイエンドのように新製品を投入しあう販売合戦などはないから、ラインナップを拡充するメリットもほとんどない。万一何かしらのニーズがあっても、Cape Verdeのコアを一部無効化するなどで対応可能だから、無理にラインナップを増やす必要はないと判断したのだろう。
むしろ可能性としては、NVIDIAの新製品に対抗してRadeon HD 7800/7700シリーズを増やす方がありそうだ。型番的には「Radeon HD 7930/7830/7730」あたりが開いている。現時点では具体的な製品計画は一切決まっていないが、こちらはNVIDIAの出方を見ながら考えるというあたりだと思われる。
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