ぱっとしない性能と看板倒れの3Dグラフィック
CL-GD546Xシリーズ
Cirrus LogicはGD-543Xシリーズに続き、1996年にCL-GD546Xシリーズをリリースする(正確にはCL-GD5462のみ1995年)。これは3製品があった。
CL-GD5462 | 2Dアクセラレーターのみ搭載 |
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CL-GD5464 | CL-GD5462に3Dアクセラレーターを追加し、PCI 2.1に対応 |
CL-GD5465 | CL-GD5462をAGP 1.0に対応 |
開発コード名は「Laguna」で、特にCL-GD5464は「Laguna 3D」などと呼ばれていた。Lagunaシリーズの特徴は、メモリーにRAMBUSの「Concurrent RDRAM」を採用したことだ。Concurrent RDRAMは連載100回で触れているが、最大667MB/秒での転送が可能なメモリーである。ただし、Lagunaでは少し動作速度を落として、1チャンネルあたり600MB/秒で利用していた。デフォルトはConcurrent RDRAMを1チャンネル構成で利用するが、最大2チャンネルでの利用が可能で、この場合のメモリー帯域は1.2GB/秒と、この当時ではトップクラスの数字を誇った。
「こうした帯域を、わずか1~2チップのメモリーで実現できるから、高性能と低価格が両立できる」というのがRAMBUS社の主張で、これにCirrus Logicが乗った形だ。しかし実際には、メモリーチップの供給ベンダーがごく限られるうえに(当時のNECが事実上唯一のベンダー)、設計がこなれていないためか実装には苦労したようで、チップの発表後もなかなか製品が出てこなかった。また、メモリー帯域が広がっているはずなのに、実際の性能はEDO DRAMをメモリーに使ったCL-GD543Xシリーズとあまり変わらないというあたりの問題は、その後Direct RDRAMで再び繰り返されることになる。
またCL-GD5464は、Cirrus Logicとして初めて3Dアクセラレーターを搭載したが、その3D性能は一言で言ってお粗末だった。当時のデータシートには豊富な3Dファンクションが書かれており、Direct3Dをフルサポートと謳っていた。ところが実際にテストしてみると画面表示がおかしいケースばかりで、性能云々以前にまともに使えないというのが正直な評判であった。AGPに対応したCL-GD5465は、その3Dファンクションすら搭載しておらず、期待して買ったユーザー(筆者も1枚買った)に絶望感を味わせてくれた。だが、同社のグラフィックスチップ事業にトドメを刺した張本人は、これではない。
先行して登場するはずが、
藪の中に消えたCL-GD547Xシリーズ
いよいよ本題の「CL-GD547X」の話に入ろう。「Mondello」というコード名で知られるCL-GD547Xは、本来ならCL-GD546Xの以前にリリースされる予定だった。正確な記録がすでにないのだが、筆者の記憶が正しければ、確か1995年中にリリースという予定をCirrus Logicはアナウンスしていたはずだ。また製品も「CL-GD5470/71/72」という3種類が予定されていた。
このMondelloは、S3やTrident Microsystemsの競合製品と同等の3D描画機能を実装する予定だった。さらにMondelloの後継製品になると、CL-GD546Xに実装されたConcurrent RDRAMを使って、さらに性能を引き上げるというロードマップだった。これが全部予定で終わったのは、同社がMondelloの開発に失敗したからだ。
先のCL-GD5464の3D機能は、このMondelloに搭載される予定だった機能のうち、まともに動く機能※1のみを突っ込んだ、いわばMondelloの残滓でしかない。そりゃ描画がおかしく性能が遅くても仕方がないというものだ。
※1 「正しく動く」ではなく、「動くか、動かないか」での動く。
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