今回のGPU黒歴史は、古くからのユーザーにはお馴染みの企業、Cirrus Logic社の「CL-GD547X」を取り上げたい。Cirrus Logicという会社は今も健在で、アナログ半導体を中心に豊富なラインナップを提供しているが、1996年まではグラフィックチップの製造も行なっていた。同社の場合、グラフィックチップの売れ行きが好調だった1991年に、アナログ半導体やミックスド・シグナル半導体を扱っていたCrystal Semiconductor社を買収。グラフィックチップ市場から撤退した後は、こちらを事業の柱に据えて成功している。
そういう意味では、やはりグラフィックチップから撤退して成功したWestern Digital社と同様に、うまく事業転換に成功したメーカーのひとつとは言えるのだろう。しかしWestern Digitalの場合は、グラフィックチップ事業が比較的うまくいっている時に売却できたのに対して、Cirrus Logicは戦線総崩れの中で撤退を決意といった様相を呈していた。そして今回のお題であるCL-GD547Xは、その戦線総崩れの引き金を引いたとでも言うべき製品である。まずは当時の同社のラインナップから説明していこう。
低価格向けに地道なビジネスをしていた
初期のCirrus Logic
Cirrus Logicは1981年に、Patil Systems Inc.という名前で創業した。グラフィック分野に参入するのは1987年のことだ。最初の製品はXTバス対応2チップ構成の「Eagle」こと「CL-GD400」(CL-GD410+CL-GD420)で、SuperVGA互換チップとしてVideo7社の製品に採用される。翌年には16bitのISAバスに対応した「Eagle II」こと「CL-GD500」(CL-GD510+CL-GD520)が登場し、こちらは複数のビデオカードベンダーに採用される。
それに続いて登場した「CL-GD5320」は、機能的にはEagle IIと差がないものの、主要機能をワンチップ化した。もっとも当時の製品の写真を見ると、グラフィックチップよりもカード上のROM BIOSやRAMDACの方がはるかに大きいため、あまりワンチップ化のメリットはないようにも感じる。それでも基板のサイズが、今で言うロープロファイルカードと同じ程度に小型化されたから、多少なりとも低価格化には貢献したのだろう。
翌1991年には、ついにRAMDACまで内蔵した「Acumos VGA」こと「CL-GD5401」(通称AVGA1)と、動作周波数を若干引き上げた「CL-GD5402」(通称AVGA2)をリリースする。これらを利用した製品は、CL-GD5320搭載製品と比べるとさらにカードサイズを小さく抑えることが可能になった。このあたりの流れからもわかるとおり、同社は一貫して低価格向けの製品にフォーカスしており、機能は少ないし性能もそれなりながら、とにかく最終製品を安く構成できる、という点が最大のメリットとされた。この流れは、続いて登場する同社の製品にも一貫して受け継がれることになる。
Acumos VGAの改良型が「CL-GD5410」である。もっとも、何をどう改良したのかは今となっては不明であるが(データシートにもEnhancedとしか書かれていない)、一部ノートPCに搭載されたあたりからすると、プロセスの微細化にともない低消費電力化を図ったのかもしれない。
だが1992年に登場した「CL-GD542X」シリーズが、Cirrus Logicを一躍有名にすることになる。
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