このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第147回

GPU黒歴史 まともな3Dを作れず会社も撤退 CL-GD547X

2012年04月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

性能向上でメインストリーム市場に進出
CL-GD5434で絶頂期に

Cirrus LogicのGPU製品ロードマップ

 CL-GD542Xシリーズは以下の7製品から構成された。

CL-GD5420 基本パッケージ。15/16bitカラー対応のISA SuperVGA。最大搭載メモリーは1MB
CL-GD5422 24bitカラーに対応したISA SuperVGA
CL-GD5424 CL-GD5422にVL-Bus対応を追加
CL-GD5425 CL-GD5424にTV出力を追加
CL-GD5426 CL-GD5424にBitBltエンジンを追加。最大搭載メモリーを2MBに拡張
CL-GD5428 CL-GD5426のBitBltエンジンを拡張
CL-GD5429 CL-GD5428に加えてメモリマップドI/Oをサポート

 CL-GD5420はあまり流行らなかったし、「CL-GD5425」も同様だった。しかし、Windows 3.1時代の16bitカラーからWindows 95の24bitカラーに向けて、PC業界はフルカラー対応のグラフィックチップを必要としていた。この流れにうまく乗ったことで、CL-GD542Xシリーズは広く採用されてゆく。

 特にVL-Busのマーケットが立ち上がるようになると、「CL-GD5424」シリーズはエントリーモデル向けに広く利用された。さらにBitBltエンジンを搭載した「CL-GD5426」は、価格帯に見合わない高性能ということで、低価格向けではなくメインストリーム向け製品という扱いを受けるようになる。もっとも上位モデルである「CL-GD5428」は、Enhanced BitBltエンジンを搭載したと言いながら、デバイスドライバーがそれをうまく扱えなかったためか、ベンチマークでも体感でもその差はほとんどなかった。

 ハイエンドの「CL-GD5429」はさらに意欲的だった。複雑なBitBlt操作はCPUにやらせようということで、グラフィックスカード側のDRAMをCPUから高速に操作できるようになっており、そのためメモリーアクセスのレイテンシをかなり削減した“とんがった”製品であった。しかしCPU負荷が増えるうえに、当時の386~486世代ではメモリーのビット操作がそれほど高速ではなかったこともあり、ほとんどこの機能が活用されることはなかった。

 そんなわけで一番売れたのはCL-GD5426だったのだが、これによりCirrus Logicはメインストリーム向けのグラフィックチップベンダーとしてそのポジションを確立するに至った。

 CL-GD542Xシリーズに続いて、1994年に同社が発表したのが「Alpine」こと「GD-543X」シリーズである。もっともこちらのシリーズはちょっと複雑なラインナップをしていた。

CL-GD5430 CL-GD5429と同じコアにPCIのサポートを追加
CL-GD5434 内部を64bit化。あわせてメモリーインターフェースも64bit化
CL-GD5436 最大80MHz動作とEDO DRAMのサポート、PCI 2.0のBurst-cycleに対応。VL-BusやISAバスのサポートを削除
CL-GD5440 CL-GD5430をベースに、CD-ROMやTV表示を目的としたビデオアクセラレーター
CL-GD5446 CL-GD5434をベースに、CD-ROMやTV表示を目的としたビデオアクセラレーター

 つまり「CL-GD5440/5446」はPC向けというよりも、VideoCDプレーヤーのような家電機器向けも睨んだ構成になっており、実際TV機能付きのオールインワンPCや、一部家電などで利用された。これにあわせてCL-GD5440にはTVデコーダーチップが、CL-GD5446にはMPEGデコーダチップが同社から提供されていた。

 一方、純粋なPC向け製品は「CL-GD5430/5434/5436」の3製品である。このシリーズもまたよく売れた。一番ヒットしたのは、ミドルポジションにあるCL-GD5434であった。もともとこのCL-GD543Xシリーズは、ソフトウェア的にはCL-GD542Xシリーズと完全互換で、純粋にハードウェアのみ高速化したものである。しかし64bit化されたメモリーバスと、同じく64bit化されたBitBltエンジンにより、CL-GD542Xと比べて、体感的にもベンチマークでも大きく性能を引き上げていた。

 特にCL-GD5434は、50MHzのVL-Busに対応しながら“まともに動く”数少ないグラフィックチップであり、これも人気を博す理由のひとつとなった。また内部メモリーの64bit化により、この当時はまだニーズがあったDOSアプリケーションも高速に動いた、というのも少なからぬメリットだったと言えよう。

 一方で、CL-GD5430は性能的にあまり芳しくなく、他方CL-GD5436はその性能を生かしきるチップセットがまだなかった。PCIバスマスターがまともに動くようになったのは、1995年に登場したIntel 82430FXチップセット以降の話なので、無理もない。PCIそのものがまだ高価で、一般ユーザーにはあまりなじみがなかったのも災いしたようだ。このAlpineをリリースした1994年が、Cirrus Logicの絶頂期と言ってもよかった。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン