※この記事は佐藤達郎氏のメールマガジン「"謎の広告"探偵団 - 世界の広告スキルを学んで、仕事を私生活を充実させよう! -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
美しくも目を奪うビジュアル。しかし、今までの"広告"という視点では、理解しづらい広告コミュニケーション。その背後にはどのような意図が?そしてなぜ成功につながったのか。佐藤達郎氏がブランデッド・コンテンツの草分け的な作品を題材に解説する。
何十万個というカラーボールが、ただ坂道を転げ落ちて行く。一遍の映像詩のように
坂を転げ落ちる数えきれないほどのスーパーボール(小さな弾むカラーのボール)。時にアップになり、時にスローになり、門柱の後ろに隠れる少年や、倒れるゴミ箱、排水口から飛び出るカエル、道路を埋め尽くすスーパーボールなど、美しくも目を奪うビジュアルが、映し出される。
バックに流れるのは、ギター一本で奏でられる、優しくて情緒たっぷりの歌。この音楽の良さとも相まって、いわゆるテレビCMとは別物に見える。それは、一遍の美しい映像詩だ。
こちらで、ご覧いただけます。
SONY UKの大画面TVブラビアのCM。ブランデッド・コンテンツの記念碑的作品
この一遍の映像詩の最後に映し出されるのは、SONYの大画面TVブラビア。メッセージは、「他のどこにもない色(Colour like no other)」。SONY UK(イギリス)のテレビCMなのだ。このテレビCM"ボールズ(BALLS)"は06年カンヌ国際広告祭のフィルム部門金賞受賞作品。音楽の使い方の良さを競うBest Use of Musicでも金賞を受賞している。
このテレビCMは、ブランデッド・コンテンツの草分け的存在だ。ブランデッド・コンテンツについては、メルマガの第6回で紹介した。その時ご紹介したのは、Beer Cannonというミラービール社のライトビールの動画。ビール缶に砂をつめ、手製のキャノン砲から発射!標的のメロンなどを打ち抜くというもの。ここでは深くは触れないが、自社の製品で悪ふざけをしているようなこの動画の意味合いを解明し、ブランデッド・コンテンツについても説明をした。
すなわち、今までの"広告"という視点では、理解しづらい広告コミュニケーションで、「広告らしくない、商品のメッセージをあからさまに伝えようとしない、そんな広い意味でのコンテンツ」を、"ブランデッド・コンテンツ"と呼ぶ。"ブランドのメッセージを強調するためのコンテンツ"といった意味だ。
そして、そのブランデッド・コンテンツとして最も早い時期に注目を集めたのが、このブラビアの動画だ。まず、コンテンツとしての魅力に溢れている。テレビCMとして放映しただけではなく、自社ウエブサイトでも積極的に公開。そして、撮影手法についても、CGを使っているのか、まさか本当にボールを落としているわけではないよね、などの噂を醸成。
メイキングビデオも公開し、そこには何十万個というスーパーボールをサンフランシスコの坂道にバズーカ砲のようなもので落とし、機動隊が持つような透明な盾で自らの身を守りながら撮影に臨むクルーが映し出されている。何度でもできる仕掛けではない。一度きりの撮影チャンス。撮影隊のドキドキまで伝わってくる。撮影の成功に、歓声をあげる撮影隊。噂は噂を呼び、YouTubeでも、当時の作品としては記録的な再生回数を誇っている(2012年4月現在では300万回以上)。
メイキングビデオは、こちらで、ご覧いただけます。
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