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『ビッグデータ革命』の著者に聞く 最終回

プールから海、そして太平洋のど真ん中を泳ぎ切るスキルを身につける

増え続けるデータ量と適切に付き合う心構えとは?

2012年03月12日 09時00分更新

文● 神田晴彦/野村総合研究所 ビジネスインテリジェンス事業部
聞き手●桶谷仁志

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ソーシャル時代の企業の課題とは

 先に述べたように、日本でもすでに多くの企業が、ソーシャルメディアに取り組むようになってきました。ただ現状では、着手しただけで、まだ足踏みしているケースが多くなっています。

 例えば、「ツイッターの公式アカウントを取得しました」とか、「フェイスブックの公式ページを作りました」という段階まできて、肝心の次のステップ、つまりソーシャルCRMまで進まずに、足踏みしている状態です。

 というのも、各社とも「他社さんがやっているので」という消極的な動機で公式ページを作っているために、そもそもの目的、目標が定まっていないのです。公式ページを作っただけで安心せず、目標をしっかり再定義したうえで、ビッグデータ革命の果実の一つであるソーシャルCRMに、どう取り組んでいくかを考えるべきでしょう。

 わかりやすく説明をすると、ECサイトや通販の業種では、ツイッターやフェイスブックの分析結果を、レコメンデーションの改善に役立てることができます。

 フェイスブックの登録情報や行動履歴は、個人の人となりをよく表します。多くのお友達の書き込みに、頻繁にコメントを投稿している人もいれば、たまに「いいね」を押すだけの人もいます。海外の写真ばかりに、「いいね」を付ける人もいるといった具合です。

 こういった情報をきちんと蓄えておき、自社サイトの会員IDと結び付ければ、個人の行動や嗜好がよくわかるようになります。そのデータを活用すれば、購買履歴と照らし合わせて、より適切なレコメンデーションができるようになるのです。

5年後のビッグデータビジネスを考える

 ビッグデータ、つまりデータの量や種類は、今後、さらに増えることはあっても、減ることはないと思います。また、本書『ビッグデータ革命』で紹介されているような形で、非常に有効に使えるようになったデータを、「一切利用しない」ということもないでしょう。

 そう考えていくと、今後の企業は、やはり何らかの形で、ビッグデータを適切にさばいていく必要があります。現在はまだ処理できるデータ量だったとしても、5年後には、相当なデータ量になっていることが予想できます。

 そうなる前に、いろんなアプローチで、ビッグデータを処理する術を身につけておく必要があるのです。ですから、ここ1~2年は、企業にとって、どんなツールを使うのか、どんな分析者を養成するのか、あるいはどんなケースでは外部に委託するのかを準備しておくのが将来のビッグデータに取り組むための勝負どころでしょう。

 現在、ビッグデータビジネスへの取り組みで、先行事例として非常に参考になる業種は金融と通信販売だと考えています。金融、通信販売を筆頭にしたビッグデータビジネスの成功事例は、今後とも続々と発表されるはずですので、それらを積極的にチェックし、自社の取り組みの参考にして欲しいと思います。

神田晴彦(かんだ・はるひこ)

ビジネスインテリジェンス事業部 主任研究員。専門は、テキストマイニング、消費者行動など。マーケティングリサーチやソーシャルメディア、コールセンターのコンサルテーションを数多く手がける。近年では中国におけるVOC活用プロジェクトにも従事。社団法人企業情報化協会VOC活用研究会コーディネーター。『顧客の声マネジメント』(共著、オーム社)、『顧客の声分析活用術』(共著、リックテレコム)をはじめ、多数寄稿。

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