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『ビッグデータ革命』の著者に聞く 最終回

プールから海、そして太平洋のど真ん中を泳ぎ切るスキルを身につける

増え続けるデータ量と適切に付き合う心構えとは?

2012年03月12日 09時00分更新

文● 神田晴彦/野村総合研究所 ビジネスインテリジェンス事業部
聞き手●桶谷仁志

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個人の趣味嗜好に合わせたマーケティングが必須に

 また、トゥルーテラーを使えば、書かれたテキストからその人の趣味嗜好を読み取れるので、その嗜好に合わせた広告もしくはレコメンデーションをピンポイントで表示したり、配信したりすることができます。

 技術的には難しいことではなく、後はどのようなプラットフォームやメディアなどを使って、そこにどういうスタイルで、広告やレコメンデーションを埋め込んでいくかという判断が大事になります。

 従来型のレコメンデーションは、本書『ビッグデータ革命』でも紹介したアマゾンの例のように、自社の購買データに基づいたパターン認識によって、商品を推奨していました。

 ソーシャルCRMでは、そのレコメンデーションの判断材料に、個人の詳細な趣味嗜好データが加わるのです。ソーシャルCRMで、広告やレコメンデーションは、より一層、精度の高いものになると言っていでしょう。

 ある業界で、リーディング企業の1社がこうした優位性を持つソーシャルCRMを本格運用すれば、他社も同様に、その顧客の趣味嗜好に合わせたマーケティングをするしかなくなります。ですから、日本でもソーシャルCRMは、企業にとって必須の手法になると考えています。

ベイズ統計で分析に主観的な判断を盛り込む

 先に触れたように、顧客の趣味嗜好に合わせた広告やレコメンデーションを、どのようなプラットフォームやメディアで展開するかは、マーケティング担当者のセンスや仮説設定の能力が試される重要な課題です。本書第1章の冒頭に出てくるような「セクシーな統計家」、すなわち統計解析の知識と経験が豊富で、ビジネスセンスにも恵まれた人材が、今後はさらに必要になっていくでしょう。

 その人材が持っている知識とセンスが、ソーシャルCRMの有効性を大きく左右するからです。

 こうした流れの中で、最近、マーケティング分野で再び注目されているのが、ベイズ統計という手法です。従来の統計解析は、決められた手順を踏めば、極論すれば、誰がやっても、同じような結果が出るものが主流でした。ところが、ベイズ統計では、分析者の経験則や主観を用いる考え方が基本になっています。

 ベイズ統計は、例えば迷惑メールのフィルタリングにも応用されています。このメールは不適切な内容だとか、これは絶対に重要な情報だという人手の判断、解釈を加えて、迷惑メールを自動的に判断するための計算式を補正していきます。

 こうした手法は、計算式を補正するための計算が膨大なものになることがネックになって、従来はさほど使われていませんでした。ところが、大量データの計算が実現可能になったために、ベイズ統計の手法も再評価されることになったのです。

 おかげで、データサイエンティストの能力とセンスが、より一層、クローズアップされました。トゥルーテラーでも、テキストマイニングの実行者のスキルやセンスを、解析に反映できる機能を盛り込み、ソーシャルCRMやベイズ統計の動きに対応しています。

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