つまづきの始まりは「Voodoo3」
ハードウェアT&L時代で後手に回る
ところが1998年にリリースした「Voodoo3」で、3dfxは大きなミスを犯した。Voodoo2までの同社は、あくまでもグラフィックチップを供給する立場であり、これをさまざまなカードベンダーが製品化として売っていた。ちょうど現在のAMDやNVIDIAの形態である。特にCreative LabsやDiamond Multimediaは、Voodoo2ベース製品の大手ベンダーであった。
ところが1998年12月に3Dfxは、グラフィックカード競争の激化に敗れつつあったSTB Systems社を買収。それと共にVoodoo3では、STB Systemsの持っていた設備でカードを製造して、3dfxが販売するという方針に切り替えた。3dfxとしては、チップ単体で売るよりもカードで売ったほうがより利幅が大きい、という判断をしたのかもしれない。だが結果として、これまで有力パートナーだったCreative LabsやDiamond Multimediaを初めとする、カードベンダーの怒りを買うことになった。
これらのベンダーはいずれも、S3やNVIDIAのチップをベースとした製品ラインナップに切り替えることになり、おまけにVoodoo3搭載製品の立ち上げがやや遅れた(製品出荷は1999年4月)こともあって、3dfxのシェアは急落する。
さらに悪いことに、やがて性能面でも後れを取ることになってしまった。Voodoo3発売当時の競合製品といえば、NVIDIAの「RIVA TNT」や旧ATIの「Rage 128」といったところで、これらに比べるとVoodoo3は十分に高速だった。しかし、1999年8月に発表されたNVIDIAの「GeForce 256」でいきなり勢力図がひっくり返ることになってしまった。
ハードウェアT&Lの搭載により、Direct 3Dで使い物になる3Dグラフィックが初めて出てきたという言い方もできる。翌2000年7月には、ATIもやはりハードウェアT&Lを搭載する「RADEON 256」を発表し、これ以降ハードウェアT&Lの搭載されていないグラフィックチップが競合するのは、非常に難しくなってきた。
ところが3dfxはこうしたハードウェアT&Lへの対応はかなり後手に回った。同社は、むしろAA(アンチエイリアス)などへの対応が先に必要と判断したようで、ハードウェアT&Lへの対応はその後となっていたから、いきなりマーケットで出遅れることになってしまった。
それでも1999年の展示会COMDEXでは、3dfxは新世代チップである「VSA-100」と、これを搭載した「Voodoo4」「Voodoo5」を発表する。Voodoo4はVSA-100を1基搭載するローエンド向け。Voodoo5はVSA-100を複数基搭載し、これをSLIで接続するというものだ。実際の製品投入はまずハイエンドから、ということでVoodoo5が2000年6月に発表され、Voodoo4は2000年9月にずれ込んだ。
これに続き、VSA-100を4基搭載した「Voodoo5 6000」の開発もほとんど終わっていたが、最終的にこれは発売されることなかった。2000年12月、3dfxはNVIDIAに買収され、Voodooシリーズは終息することとなった。
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