岐阜県中津川市に本社を構える中央物産は社内サーバーのデータ保護のため、クラウドバックアップを容易に実現するバラクーダネットワークスの「Barracuda Backup Service」を導入した。製品導入の背景や効果について、中央物産と導入担当の東海業務ソフトの担当者に聞いた。
東海大地震のリスクを想定したDRを
当初から導入
中央物産は、冷媒用断熱被覆銅パイプのOEM製造で高い国内シェアを誇る企業で、最近ではウレタン加工や新規事業である電動アシスト自転車やバッテリ関連にも力を入れている。また、「GLOBAL COMPANY 中津川から世界へ 世界から中津川へ」を合い言葉にしたグローバルカンパニーを標榜し、海外への投資を積極的に進めているのも大きな特徴。中央物産 総務経理部 総務グループリーダーの林達也氏は、「現在、中国沿岸地域に合弁会社が14社あり、エアコンの導管や断熱材、電気基盤や炊飯器の部品などをそれぞれ製造しています」と同社の現状について説明した。
同社のシステムは、東海業務ソフトがオフコンによる生産管理システムからスタートし、2000年にクライアント/サーバー型システムに移行。これら基幹系システムと並行して、情報系システムやネットワークの整備も進み、ファイルサーバーやWindowsのActive Directory(以下、AD)を導入したという。こうしたシステム構築や運用は古くから名古屋のSIerである東海業務ソフトが担当しており、本社のAD/ファイル/DBサーバーなどのほか、計120台程度のPCが本社や工場、営業所で利用されている。
さて、今回Barracuda Backup Serviceを導入した背景には、バックアップサーバーの入れ替えがきっかけだという。従来、同社では本社に設置されているサーバーのデータを「Symantec Backup Exec」でバックアップサーバーに保存していた。さらにバックアップサーバーは、システム導入と運用を担当する東海業務ソフトのデータセンターと、「HP OpenView Storage Mirroring」によってミラーリングされており、災害対策もきちんと行なっていた。中央物産 総務経理部 情報システムグループの加藤伸也氏は、「岐阜の中津川は、東海大地震が起こった際の危険地域にも指定されていますので、本社にデータを置いておくことは危険です。(地震発生時にも)すぐにデータをリカバリし、他拠点で業務を進める必要があります」という高い災害対策意識が背景にある。
しかし、バックアップサーバーの導入が2005年であったため、ハードウェアが老朽化。容量面でも不足してきたため、バックアップシステム自体を刷新することにしたという。現行に比べてコストを削減でき、データの増大にも対応し、さらにDRを前提としたバックアップシステムを東海業務ソフトにリクエストしたところ、提案されたのがBarracuda Backup Serviceというわけだ。
システム全体のランニングコストが約半分に
Barracuda Backup Serviceはバックアップに必要なハードウェアやソフトウェア、クラウドサービスを統合した製品。具体的にはバックアップ用のエージェントをバックアップ対象のマシンに導入すれば、Barracuda Backup Serverと呼ばれるRAID対応アプライアンスにバックアップをとることが可能になる。さらに、米国にあるバラクーダのクラウドサービスにリモートバックアップする機能も搭載している。社内LANに設置するだけで、ローカルでのバックアップだけではなく、DRまで手軽に実現するという中小企業向けの製品だ。
2011年9月に東海業務ソフトからの提案を受けた中央物産はバラクーダネットワークスからデモ機を調達。重複排除の効果やGUIの使用感などを試した後、2011年11月には従来バックアップサーバーとして利用していたNASをリプレイスするに至ったという。導入したのは2TBの容量を持つ1U型アプライアンス「Barracuda Backup Server 490」だ。
一連のBarracuda Backup Serviceの導入や運用を担当した東海業務ソフト 営業 林宏治氏は、製品選定の理由として低廉なランニングコストを挙げた。従来のバックアップシステムは、バックアップやミラーリングソフトウェアの保守コストがかかっていたが、「Barracuda Backup Serviceはエージェントのライセンスが不要なので、ライセンスコストを抑えられます。また、従量課金なのでデータ保管のコストも低価格です」(林氏)ということで、大幅なコスト削減が実現した。同社の試算によると、従来に比べて年間のランニングコストを半分以下に落とすことが可能になるという。
もう1つの大きな理由はやはり容易にクラウドの恩恵を受けられるという点である。Barracuda Backup Serviceにより、中央物産のサーバーのデータは海を越えた米国のバラクーダのデータセンターで保護される。従来、データの預け先が東京のデータセンターであったため、東日本大震災のような広域災害への対策としてより高いレベルが実現できたといえる。もとよりグローバル展開を積極的に行なっている同社だけに、米国のクラウドにデータを預けるという点もあまり不安はなかったようだ。
もちろん、数百ギガバイトにおよぶデータの転送をインターネットVPN経由で行なうため、パフォーマンスは心配になるが、Barracuda Backup Serviceでは重複排除の技術により、データ量を大幅に削減できる。しかも、エージェント側からバックアップサーバー側に移す際、そしてインターネット経由でクラウドサービスへ移す際で2回に渡って重複排除処理を行なう。ブロック単位で同一データを検出する重複排除の処理では、対象となるホストが増えれば効果も高いため、複数のWindowsサーバーでバックアップをとる中央物産のような環境では大きなデータ削減効果が期待できる。実際、「初期転送は1日以上かかりましたが、それ以降は問題ありませんでした。元のデータは250GBくらいですが、クラウド側では100GB程度に収まっています」(加藤氏)ということで、予想以上の効果だったという。
東日本大震災以来、DRは多くの企業にとって避けて通れないテーマとなりつつあるが、コスト面で敷居が高いのも事実である。その点、ライセンスフリーのバックアップエージェントを搭載し、月額課金で必要な分だけ利用できるクラウドバックアップを簡単に利用できるBarracuda Backup Serviceは、SMB(Small & Medium Business)や中小企業にとってコスト効果の高い選択肢といえるだろう。
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