
去年発売された「初音ミク sings ハルメンズ」は、ボーカロイドでニューウェイヴ時代の伝説のグループをカバーするという大胆な企画アルバムだった。それがニューウェイヴ時代の楽曲とボーカロイドの親和性が意外なほど高いことを立証。今年10月末に発売された「初音ミク sings ニューウェイヴ」は、その続編となるアルバムである。
ニューウェイヴ時代の代表的な楽曲を、うどんゲルゲ、キャプテンミライ、耳ロボP、みろんP、ぶっちぎりP、kihirohitoという前作でもおなじみのボカロPがカバー※。新たに、ぼーかりおどP、「調教すごい」で話題になったMitchie Mも加わり、さらにパワーアップした印象がある。
※ デッドボールPは実は根がプログレなので外れた。
目玉は、ジューシィ・フルーツの「ジェニーはご機嫌ななめ」に、本物のジューシィ・フルーツのボーカリスト・イリア嬢が参加し、ボーカロイドとのデュエットを披露していることだ。この曲はイリア歌唱版と初音ミク版の2トラックが用意されているので、人間とボーカロイドのバージョンを聴き比べられるというのが面白い。
もうひとつ面白いのは、オリジナル音源によるほぼ同じ選曲のリマスターコンピレーション盤「KING ソングス of ニューウェイヴ」と同時に発売されたこと。ほぼ30年前の本物のトラックと、ボカロバージョンを聴き比べられるというのは滅多にない企画である。おそらくニコニコ動画のリスナーは、この時代の曲をボカロカバーで知った人が多いはずなので、ぜひ合わせて聴いてほしいアルバムだ。
この2枚のアルバムは、サエキけんぞうさんの企画による「ニューウェイヴほぼ30周年祭」の第1弾として企画されたもので、同時にチャクラの「さてこそ+5」と「チャクラ+5」、野宮真貴が在籍したポータブル・ロックの「ビギニングス」の再発盤、そしてBoogie the マッハモータースの新作「電波胎動」と合わせて発売されている。
そこで前作の「初音ミク sings ハルメンズ」から本作に至る経緯から、現況の分析、そして今後の展開について、プロデューサーのサエキけんぞう氏と、うどんゲルゲ、キャプテンミライ、みろんPのボカロP3人に話を聞いた。
初音ミク sings ニューウェイヴ
01 ジェニーはご機嫌ななめ(イリミクver.) - うどんゲルゲ
02 美術館で会った人だろ - ぶっちぎりP
03 copy - うどんゲルゲ
04 20世紀の終わりに - kihirohito
05 玉姫様 - うどんゲルゲ
06 シティボーイ - Mitchie M
07 福の種 - キャプテンミライ
08 東京ガール - 耳ロボP
09 女王陛下のチェスゲーム - みろんP
10 磁力ビギン - みろんP
11 グリーンブックス - キャプテンミライ
12 Aunt Sally - kihirohito
13 コンピューターおばあちゃん - ぼーかりおどP
14 リズム運動 - うどんゲルゲ
15 女ともだち - ぶっちぎりP
16 ジェニーはご機嫌ななめ - うどんゲルゲ

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