四本淑三の「ミュージック・ギークス！」 第78回

NWほぼ30周年記念、ほぼ1万字座談会!!!

ニューウェイヴは初音ミクで完成した？

ボーカロイドシーンはニューウェイヴ適性の高い人の集まりだ

――　Mitchie Mさんは、残念ながら今日の取材には参加されていないんですが、この夏「調教すげえ」ってことでニコニコ動画的には時の人だったわけです。

サエキ　そうですね、史上最速殿堂入りを果たしたPということで。特に声の調教に関して、新しい次元に踏み込んでいるという印象は、素人が聴いてもわかることだと思うんですよね。

――　彼に8 1/2を割り振った理由は何でしょう。

サエキ　内情から言えば「シティボーイ」が1曲残っていたということなんですが。ストレートなパンクの曲であるにも関わらず、バッキングがシンセサイザーという曲で。FREELYみたいな複雑な打ち込みの曲を作っている人に、上野耕路の荒れ狂うシンセをやらせたいなと思ったんですね。

――　ご本人はニューウェイヴ的なセンスの持ち主なんですか？

サエキ　僕はそう思っているんだけど、本人はクラブサウンドの人なんですよ。90年代以降の人で、ニューウェイヴは素養として知っているということで。この中のPにも何人かいると思うんですが、素養としてのニューウェイヴと、適正としてのニューウェイヴってあると思うんですね。

――　あ、なるほど。

サエキ　僕から見るとニコ動のシーンというか、ボーカロイドシーンはニューウェイヴ適性の異様に高い人の集まりなんです。ニコ動の他のシーンと比べてもそうですよね。緻密で大胆な素養が求められると思うんですよ。だからこちらとしては手ぐすね引いているわけですが。

――　ぼーかりおどPさんは？

サエキ　あるライブで知り合ったんですけどね。今のボーカロイドシーンの中心的な感性の人にいてほしいなと思ったんですね。

――　「コンピュータおばあちゃん」はニューウェイヴ的にはどうなんでしょう？

サエキ　コスミック・インベンションは、子供がテクノをやるというので話題になったわけですね^※。NHKのみんなのうたで、坂本龍一さんが演っているバージョンがあって、それがヒットしたと。テクノは子供から年寄りまで好きという、そういうムードを創りだしたバンドですよね。

^{※ コスミック・インベンション : 1979年結成、1981年に解散。電子楽器メーカー・ファーストマン社長の森岡一夫の実娘、森岡みまを中心に結成。AKB48の作・編曲家としても有名な井上ヨシマサも在籍。当時はメンバー全員が中学生で、YMOジュニアというポジションだった。}