今から50年近く昔の1963年に発売された、パイロットのキャップ無し万年筆「キャップレス」は、当時、舶来品礼賛傾向の極めて強かった日本の筆記具界、特に万年筆の世界に強烈なインパクトを投げかけた。
発売されたばかりのキャップレスは、当時まだ子供だった筆者には高嶺の花。その後、数年してキャップレスを手に入れたときは、毎日、身につけて持ち歩いた記憶がある。そして、 1999年7月、このパイロット社の「キャップレス万年筆」は、発売36年後にアニバーサリーモデルとして復活。ISOT’99で「ステーショナリー オブ ザ イヤー」を受賞した。
出張先の大阪梅田のデパートで、たまたま見かけた朱と金のツートーンモデルをとにかく気に入ったので速攻で購入。持ち帰ってよく見たら、筆者が滅多に使わないペン先「F」の細字だった。まあ、画数の多い漢字を書く機会の多い日本ではこの細字のFがデファクト標準なのでやむを得ない。
そんなこんなで、約10年以上赤いキャップレス・アニバーサリー・モデルは長く引き出しの肥やしとなっていた。そして、キャップレスのデビューから48年目にあたる今夏、銀座伊東屋で偶然見つけたのが、真っ黒けの「キャップレス マットブラック」モデルだった。
その日は、お隣の銀座三越でパーカー社の第五世代筆記具とやらを購入したばかりだったので我慢して帰宅した。しかし、過去に同じようなケースで売り切れを経験した悪夢がよみがえり、その日の深夜にWebショップで検索し、速攻で購入してしまった。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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