四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第70回
iPhoneアプリ「ラップムシ」成瀬つばさインタビュー
190万ダウンロードのアプリ、無料じゃないと“もったいない”
2011年09月03日 12時00分更新
手描き絵はゲーム機やパソコンに触れない埋め合わせから
―― リズムシシリーズは入力する要素があるので楽器的なんですが、どう操作しても、あるテイストで音がまとまっていく。これは新しい音楽表現なのかなと思いました。
つばさ はい、そう思って作っています。ツールと捉えて楽器の代わりとして使うのはアリだと思うんですが、こちらの基本のコンセプトとしては、音楽作品なんですよね。今までの音楽の構成は、同じ時間軸上に音源が流れて、何も変わらずに終わるだけだった。それを分解してインタラクティブに遊べるようになっている。でも、どんな音が鳴るかは、こちらの世界観でコントロールしているんですね。
―― やっぱり。音大から美大に移られたりして変わった経歴だと思うんですが、絵はいつ頃から?
つばさ それはまるごと身の上話から始めなければならないんですが、小学生の頃からですね。小学校高学年の頃にゲーム機やパソコンが目に見えて進化していって、それにものすごい影響を受けたんです。
―― 90年代の半ばですね。
つばさ でも学校にも行っていましたし、常にゲーム機やパソコンに触らせてもらえたわけでもない。その埋め合わせとして、ノートにパソコンの画面や、自分で考えたゲームの落書きをしていたんです。今でも取ってあるんですけど、100冊以上はあります。たとえば小学校3年か4年の頃だと思うんですが、Windows 3.1の画面を手描きしていて……(と、iPadの画面をめくる)。
―― おっ、これは可愛い。というか、この頃から同じテイストでやっているわけですね。
つばさ そうですね。手描きテイストのルーツは小学校の頃にあって。ただ特別絵が上手かったわけでもないですし、これはプライベートなもので人に見せてどうこうという事はなかったんです。見せる自信もなかったし。
―― 音楽はいつ頃くらいから?
つばさ 中学に入るくらいからですね。家に置いてあるオモチャのキーボードを弾いていたら面白くなっちゃって、夢中になっていったんですよ。それでこっちの手描きテイストは封印してしまっていたんですね。音楽とは簡単に結びつくものではないですし、とにかく音楽方面で頑張りたいと思って。ポピュラーピアノとクラシックピアノの両方やってましたし、高校ではロックバンドをやっていましたし、その頃は60〜70年代の洋楽もかなり研究していました。
―― 研究!
つばさ あとは声楽、いわゆるオペラ発声のものを習っていましたし、同時にPAの知識を身に付けたり、作曲の勉強もずっとやってました。それで音大方面も視野に入れて、ソルフェージュのようなことも本格的にやって。そういうクラシック系のつながりの中で、国立音楽大学の音楽デザイン学科という、コンピューター音楽をやっている面白い学科があるという事を知って。
―― そこではどういう勉強をしましたか?
つばさ コンピューター音楽と言ってもテクノみたいな音楽ではなくて、コンピューターも使う最新の現代音楽になるんですけど。専攻外ではその頃からジャズを真剣にやり始めて、ピアニストとして演奏活動をしたり、キーボードはひと通りできたので、ポップスとか、ファンク、フュージョン系のサポートをやったりという演奏活動も続けてやっていました。
―― 普通にステージに立っていたことがある、ということですね?
つばさ はい。まともに演奏活動していました。演奏も楽しかったんですけど、その先に何かあると思っていて。その時点での感性には自信がなかったので、身に付けた先にある発想が大事だと思っていました。
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