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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第69回

そば屋になぜかシンセが並ぶ、謎の大阪“シンセ界”をゆく

2011年08月27日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「『小室哲哉裁判』で有名な、大阪地裁から徒歩1分」
中古シンセショップ「implant4」

 続いて国枝さんの案内で、我々は中古シンセショップのimplant4を目指した。お店は小室哲哉が懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡された、ある意味シンセ界の歴史を刻んだ大阪地方裁判所のそばにある。

「小室哲哉裁判」で有名になった、大阪地方裁判所から1分ほど歩くと……

ありました! 目印はこのかわいいマーク。ナメクジにした理由はご主人がハマっていたからだそう

店内にはこれでもかと中古シンセが並ぶ。日本全国から買いつけているそうだ

 「ニュースか何かでテレビカメラが小室さんを追っているとき、裁判所の外が映って、ちらっとうちの看板が見えたらしいんですよ」

 そう話すのは、代表の宮地 裕(みやじ ゆたか)さん。今年で35歳だ。お店の開業は2005年の10月からというので、けっこうな若さで時期にお店を始めたことになる。実はアナログシンセメーカーのREONも、implant4に触発される形で始まったらしい。

 「『若い子たちがお店を作ってシンセを盛り上げようと頑張るんだったら、俺もやるよ』(REON)みたいなことで。自分がシンセを作ったら置かせてくれないかと。儲けを考えてるとかではなくて、本当にやりたくてやっている感じですよね」

大阪のシンセメーカー・REONが50台限定で生産したアナログシンセ「driftbox S」、かわいい!

 どうやら大阪シンセ界の中心は開業時期が一番早いここのようだ。それではなぜここでお店を始めたのだろう?

 「学生のころ、ぼくも作品を作っていたんですよね。この辺はギャラリーがたくさんあるんでときどき来ていたんです。そのとき、雰囲気が何となく気に入っていたので……」

その時代から置いてあるという宮地裕さんの「人為生命体」シリーズ。実は楽器だ

楽器なのでコンコンいい音がする。鉄板を支えるステー部が共鳴して、リバーブもいい感じだ

 なるほどこの辺りは雰囲気も良く、店にも気軽に入りやすい。そのためか、implant4にやってくるのはソフトシンセから戻ってくるマニアックな人から、ただ相談にやってくるまったくの初心者までと幅広い。中にはただシンセをさわりに来るだけなんていうお客さんもいるらしい。でも、それじゃ儲からないと思うんですけど……。

 「たしかにお世辞にも儲かるとは言えないです。実際にシンセにさわって音づくりをすれば楽しいと思ってくれる人も多いのに、それができる場所が大阪にはほとんどないんですよね。それが必要だと思って始めたんですよ。シンセにさわりながら、音楽や楽器の話がゆっくりできるような楽器屋があってもいいんじゃないかと」

さわって感激その1、ARPの名機「ODYSSY (rev2)」

さわって感激その2、ドラムマシーン「Linn Drum」「TR-808」

レジ前には、ローランドの廉価版モジュラータイプ「SYSTEM100」シリーズも発見。これが最初に買いつけた機材だったそうな

どっちゃり出てきたパッチベイ(ケーブルを接続する端子板)は5円。5円って!

 確かにこのお店に置かれているシンセを全部触ろうと思ったら1回来ただけでは絶対に無理だ。展示試奏用で売りものではないレアなシンセも置いてある。そのシンセに今、まさに坂巻さんが取り付かれ、かれこれ1時間まったく離れようとしない。

 ちょっと先生、早く行かないと時間ないんですけど!

坂巻さんがはまって動かなくなった物件その1「TEISCO S-100F」 (1980年製)。1VCOながらレンジが広い。通常の2/4/8/16/32/64に加えて「LOW」というモードがあり、強烈なパルス音を発生する。鍵盤の欠けがあるため残念ながら非売品

坂巻さんがはまって動かなくなった物件その2「TEISCO S-110F」(1981年製)。モジュレーションホイールの代わりに、タッチセンシティブモジュレーションという珍しいインターフェースを持つ。こちらもおなじく非売品

「これ面白えー!」と夢中になった坂巻さんは本当にその場から動いてくれなかった

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